SeraphitaのRINKOさんとの合同誌○冊目!←何冊目か覚えてない。
『弐』とついていますが、短編読みきりです。
けしてタイトルが思い浮かばなかったわけではありませんよ。

お化け屋敷をテーマにしたお話2話収録しております。
表紙は超シリアスですが、中身は・・・とりあえず、私のはポップでライトな調査物といったところでしょうか。たぶんおそらくきっと。






以下、天華部分の文頭になります。










  一、




     いろはにほへと
     ちりぬるを
     わがよたれぞ
     つねならむ
     うゐのおくやま
     けふこえて
     あさきゆめみし
     ゑいもせす







 麻衣は手渡された一枚の和紙に書かれた文字に目を通す。
 それは、日本人なら誰もが知っている手習い唄。気がついたら口ずさみ、馴染んでいたもので、どのぐらいの年で覚えたのかも判らない。
 意識したときには空で言えるようになっていた。と、麻衣はナルにいろは唄の意味を説明する。
 外見上日本人に見えるがナルは米国生まれの英国人で、その知識上得ている日本に関することは、滞在期間の間に仕入れたこと。こういった日本人なら気がつけば知っている・・・と言った的な事には疎い。
 作者は不明で九百年年ぐらい前に作られた、七五調四句の今様(いまよう)形式の唄だ。
「そのいろは唄が重要なカギになっています」
 麻衣達に和紙を手渡した壮年の男は、疲れを戸惑いを隠しきれない声で説明する。
 夏にオープンする新しいアトラクションの重要なカギであり、テーマであると。
 新しいアトラクション・・・・簡単に一言で言うならば夏季限定でオープンするお化け屋敷だ。
 お化け屋敷というとチープな響きだが、迷路のような作りになっているため、一度入ると出るのに一時間はかかるという。
 距離は一キロほどになり、普通ならばゆっくり歩いても十五分かかるかどうかという長さだが、出るまでには平均一時間前後時間を見る必要があり、毎年毎年趣向を変えているため、来園者を退屈させず、リピーター率が高いアトラクションと化していた。
 麻衣自身も何年も前からここの話は耳にしており、機会があれば友達と遊びに行ってみたいと思っていたのだが、なかなかタイミングが合わずまだ一度も足を運んだことはないため、実際の所どんなお化け屋敷かなのかは風の噂に聞くばかりだったが、まさか、その場所に調査(しごと)で来ることになるとは思いにもよらなかった。
 どうせ来るなら調査絡みじゃなくて、遊びが良かったなぁ・・・と、案内のパンフレットを見ながら溜息を一つ零す。
「谷山さんは、まだ未体験だったんですか?
「そーなんですよ。夏季限定のアトラクションじゃないですか。行けるタイミングがなかなかなくて、行きたいなぁで終わっているんですよね。大抵計画上がっても集団デートになちゃってますし」
 集団デートとなるとまず麻衣は参加できない。
 ナルがそんな下らないことに付き合ってくれるとはとうてい思えない。
 二人っきりのデートもままならないのに、その他大勢が一緒となれば絶対に一人で放り出されるに違いない。
 麻衣の言葉にされなかった思いを察した安原は苦笑を漏らす。
「谷山さんご存じですか? ここは別名愛のリトマス試験紙とも言われているんでしよ?」
「なんですか?そのベタなネーミングは」
「ちなみに、僕が付けたわけではありません。何時しかそう呼ばれるようになったんです」
「何をもって、お化け屋敷が愛のリトマス試験紙なんですか?」
 リトマス試験紙と言えば、酸性かアルカリを見極める試験紙だ。愛に酸性もアルカリもないというのに。
「このお化け屋敷の怖さを未体験だから判らないのかも知れませんけれど、大の男をもちびらせると言われるほど、怖いお化け屋敷なんですよ」
「安原さんちびちゃったんですか?」
「普段本物に接している僕が作り物でちびるわけないじゃないですか」
 いやだなぁ、谷山さん。所詮作り物ですよ。作り物。と笑いながら言い切る安原の顔が少しばかり強ばっていたことは、あえて気がつかないふりをする。
「まぁ、そのぐらい怖いって評判のお化け屋敷だってことはですよ、カップルで肺ったら実は女性より男の方が怖がった  というオチも無い訳じゃ無いんですねぇ。強がっている男の方が実は弱かったというオチは珍しくありませんし」
「ああ、女の人より男の人の方が血に弱いっていうのと同じような感じ? 痛みに関しても男の人の方が弱いって言われたりするっけ?」
 女は毎月一回月経があるため否応なく血を目にするからとも、女は出産時の痛みに耐えねばならないから、男より痛みに耐性があるとか、嘘とも本当ともつかない話なら、麻衣も聞いた事がある。
「それに、いざとなったら女性の方が男より肝が据わるって言いますしねぇ」
 なにやら、安原しみじみと言うがあえてそれも聞き流す。
「いざ、お化け屋敷に入った彼女よりも恐がってビビリまくったあげく、情けない男という烙印を押されて幻滅されるカップルも少なくはないという話で、カップル向けのキャッチフレーズで、君たちの愛はこの怖さを乗り切れるか!?とかいうのもあったりしましたよ?」
「なんですか、その寒すぎるキャッチフレーズ」
「僕が作ったキャッチフレーズなわけじゃないですか。まぁ、所長となら一緒に行っても情けない姿を拝むという状況にはなりそうもないですけどねぇ」
「作り物にナルが及び腰になるなんてありえないし。というか、安原さん、あたし達普段本物相手にしているんですから、作り物でビビったらちょっと情けないですよねぇ」
「ですよねぇ」
 目がやはり若干泳いだ気がしたが、あえてそこにはふれずに、麻衣は資料に目を落とす。 
 お化け屋敷に本物のお化け・・・洒落になるんだからならないんだか判らない。








   というわけで、お化け屋敷を舞台にした調査物でっす。




   続きが気になる方はぜひおてにとってくださいませーv