ドリーマーが送るプレゼント?


「で?」
 翌朝・・・というか昼近くに目が覚めると、ナルは麻衣から手渡された小さな包みに視線を落としたあと、麻衣に視線を戻す。
「で?じゃないよ! 誕生日プレゼント!」
「それは判る」
 蒼いビロードの小さな箱は、黒い包装紙に包まれ金のリボンで結ばれていた。どう見てもプレゼント用のラッピングではある。だが、しかしそのはこの中に入っているものが、ナルの理解を超えていた。
 小さな箱の中に納まっていたのは、小さな装身具。
 深い蒼と赤い石をつけたピアスである。
 それも左右の色違いと来ている。
 こんなものをもらってもナルには、ピアスをつけるためのホールが開いていないのだ。もらっても無意味だというのに麻衣は何を考えて買ったというのだろうか。
「ちゃーんと、ピアサーも買ったんだよv」
 にっこり笑顔で差し出したのはホチキスのようなもの。これで、簡単に耳たぶに穴が開くのである。
「で?」
 にっこり笑顔の麻衣は夕べ同様全く引くつもりはないようだ。
「あのね、サファイアと、ルビーって同じ石だって知っていた?」
「僕には関係ないことだな」
「もう! 一緒につけようよ。
 こっちは私の誕生石」
 と言って麻衣は赤い石のほうを指先でつまむ。
「こっちはナルの誕生石」
 蒼い石をつまんでナルの手のひらにぽとりと落とす。
「かたっぽずつ、おそろいでしよ?」
「僕の耳に穴が開いているならともかく、わざわざあけろと言うのか? それもお前の好みのために」
「別に穴ぐらいあけたっていいじゃん」
 そういう問題ではないと思うのだが。
「僕の誕生日になぜ僕がいたい思いをしないといけないんだ?」
 それも開けたいと思っているものでもないと言うのに。
 だが、今の麻衣にはナルの言い分など聞こえるわけがない。手を胸の前で組んでウットリと呟く。
「偶然なんだけど、二人の誕生石がもとは同じ石だなんてロマン感じない?
 赤い色だけがルビーって呼ばれているけど、石としては同じなんだって。一つのピアスを二人でつけるのってロマンだよぉ〜〜〜〜ピアスぐらいいいでしょぉ〜〜〜〜」
「僕にはロマンなんて関係ない」
「そんなこといわないで開けようよぉ〜〜〜〜」
 麻衣はナルをゆさゆさとゆするが、ナルは目を閉じたまま全くの無反応・・・・・と思いきや、ニヤリと唇がゆがめられる。
「考えてやってもいい」
 その人が悪すぎるとしか表現できない笑みを見て、思わず麻衣の腰が引けるが、ナルとおそろいのピアスと言う誘惑には勝てず、ゴクリと音を立てて唾液を飲み込むと、恐る恐るナルに問いかける。
「もう一つのプレゼントを堪能させてくれたらな」
「もう一つのプレゼントって・・・・・・・」
 なんだか、諦めて逃げたほうがいいかもしれない・・・・そう思ったときはすでに遅く、ナルの手が自分の片を掴んでいた麻衣の腕を取り、その手のひらを口元にまで寄せる。
「今度はどうやって楽しませてくれるんだ?」
 にっこりと天使もはだしで逃げるような笑顔を浮かべての問いに、麻衣は音を立てて真っ赤になると次の瞬間、鼓膜を突き破るような大声で叫ぶ。

「私は、ものじゃない〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」










 さて、数日後オフィスに遊びに来た綾子は目ざとく、なると麻衣の耳に気が付き、麻衣に問いかける。
「どうやって、あのトウヘンボクにピアスなんてさせたのよ」
「どうやってって・・・・・・・・・」
 そのまま、麻衣は真っ赤になって言葉を濁らせてしまう。
 いえる訳がない。
 思い出すだけで、頭がオーバーヒートを起こしてしまいそうだ。
 音を立てるような勢いで真っ赤になる麻衣に、綾子はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべてつっつく。
「なによ。教えなさいよ」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜内緒!」
 麻衣はぱっと耳を手で隠すと、逃げるように給湯室に駆け込んだ。
「ナル?」
 聞くだけ無駄と思いつつもナルの方に話題を転じると、それはそれは、綺麗過ぎる笑顔を浮かべて軽やかに言いのけた。
「麻衣から誕生日プレゼントをもらっただけですよ?」
 白々しすぎる言葉に、綾子は二の句が続けられなかったと言う。
「ぼーずに聞かせられないことでもあったのかしら?」
「さぁ〜? 聞かせても構わないですが?」
 恐ろしいほどの上機嫌さは、=坊主の致命的なダメージになるということだ。
 綾子は肩を軽くすくめると、
「あんた達にあてられるのはぼーずだけでいいわ。あたしは、人のノロケなんて聞いて楽しむほど悪趣味じゃないし。
 まぁ、あんたもほどほどになさいよ。女の子は睡眠不足はお肌の大敵なんだからね」
 麻衣が聞いていたらそのまま卒倒しかねないことをさらりと言いのけると、綾子はこれ以上いても当てられるだけだわと言わんばかりに立ち上がる。
「ご忠告、聞いておきましょう」
 いけしゃあしゃあと言ってのけるナルに、今度麻衣に精力剤でも差し入れしようかしら?と思いながらオフィスを後にしたのだった。


 さて、ぼーずがこのペアのピアスに気が付いたらどんな反応をするか?
 一人楽しむ姿が、道玄坂に消えてゆく。













☆☆☆ 天華の戯言 ☆☆☆
本当にこれでおしまいですv
シリアスムードをぶち壊すような話でごめんなさい・・・・・・ただ、書き終わった時プレゼント上げてない・・・・このままじゃ本当に麻衣がプレゼントになる。と気が付いた時たまたま、ピアスネタが浮かんだのでおまけでUP。
意味なし山なし落ちなしな話になってしまいましたが・・・・・・まぁ、二十歳の誕生日プレゼントは、ピアスでした。
いや、ピアスの穴が本筋(私が書く)でも開いているかは別ですが・・・とりあえず、今回は開けたという事でv



                                    おちまい♪