幼い子供らには世の中不思議がいっぱい。
自分達にとって当たり前の物。
だが、それは他の人にとっては当たり前ではないかもしれない。
摩訶不思議なことは世の中には多くはびこっているのだろうか。



 

    
    

 漆黒の髪と瞳だが、片方の目はダークブラウンという、少し変わった色彩を持つ将来がとてつもなく楽しみな双子の姉妹である、笑麻(エマ)と愛衣(メイ)は不思議そうにその光景を見ていた。今だかつて一度も見たこともないような光景と言っても過言ではないかもしれない。
 この日二人は幼稚園で仲が良くなった友達の家に遊びに来ていた。余所のお家に遊びに行くのはこれが始めてである。今まで、両親の仕事仲間のお家には遊びに行ったことはあっても、同年代のともだちの家は初めてで、ドキドキして前日はよく眠れなかったぐらいだ。今日は全国的に日曜日(日曜日に全国も何もないが)で、一応一般的なサラリーマン家庭はお休みのはずである。笑麻と愛衣の家はサラリーマン家庭というわけではないが、調査が入らない限り日曜日は休みになっていた。
 明里ちゃんという少女の家に遊びに行った笑麻と愛衣は初めて見る光景に、大きな双眸を更に大きくして、可愛らしい小さな口をぽかぁ〜んと開けてそれを見ていたのだった。
「あなた! 昼間っからゴロゴロしてないで、子供達を連れてどこかへ出掛けたらどうなの!?」
「たまの休みぐらいゆっくりさせてくれよ」
 そう言って、明里の父親はパンツの中に手を入れてボリボリと掻いている。ある意味日本の疲れた中年の家庭ではありふれた光景かもしれない。
 リビング…居間というものだろうか。畳の部屋に座布団を折り畳んで枕代わりにして寝っころがりながら、テレビを見ている。一言で言えばだらしがない姿で、だらしなく寝そべっている大人の男の人がどうやら父親らしい…双子は父親がそう言う風にしているのを一度も見たことがないために、言葉が出ないようだ。
 双子にとっての父親は、無口で無表情で誰よりも格好良く、一見怖そうだが実は優しい。そもそも、あんなだらしない格好でいるところを今だかつて見たことがない…そんな父親が大好きだ。いつも仕事ばかりしていてあまり一緒にはいられないが、側に座っているだけですごく嬉しい気分にさせてくれるのだ。何も話さなくても抱っこをしてくれたり、頭を撫でてくれたり、手を繋いでくれたりしてくれるのが、すごく嬉しくて、はしゃいでしまう。が…ハッキリ言って悪いのだが、明里の父親の側にはあまりいたくはない…思わずそう思ってしまった。だって…お風呂に入っているわけでも、トイレにいるわけでもないのに、お尻かいているんだもん。偽りない嫌悪感だった。
 それを示すかのように、正直な双子の姉妹の眉が八の字に寄せられてしまう。
 母親と言えば、トレーナーにジーパンでヒステリックに叫きながら、お掃除をしている。
ハッキリ言ってキンキン声が耳に触ると言うかすごく怖い。不安になってしまう。今まで笑麻も愛衣も、母親がヒステリックな声で叫くところを今だかつて見たことがないのだ。もちろん時々怒ることもあるし、優しいだけじゃないコトは知っている。だけれど、それでも双子にとって母親とは優しく、包み込むように暖かな人だ。母親に怒られると言うより注意と言われるものだろうが、言われると怖いと言うより悲しくなってしまう。何だか、自分達が途方もなく悪いことをしてしまった気分になってしまうのだ。項垂れたりしていると、母親は優しい声でそれでも何がいけなかったのか、教えてくれる。けして、その声が乱暴なまでに荒げられる事はない。だが、明里の母親からは優しさとか暖かさが感じられず、隠しようもない苛立ちが伝わって来、不安になってしまうし、もの凄く怖くてこの場から逃げ出したくなってしまう。
「掃除の邪魔なのよ! 本当にうっと惜しいんだから。
 どこか余所へ行っていてよ!!」
 掃除機の先で父親をけっ飛ばしながら、口汚く叫いている。
 母親が父親をである。そんな光景一度も見たことがない。もちろん父親が母親に手を上げたことも見たことはないのだが…止めなくていいのだろうか?
 このままでは大喧嘩に突入してしまう。笑麻と愛衣は不安と恐怖に身体を寄せ合うが、明里は至って平然として、またいつものことか…と言わんばかりの溜息を一つもらしただけだ。なかなかに場慣れしている様子の幼稚園児である。
「笑麻ちゃん、愛衣ちゃん、あたしのお部屋に行こう。ここ煩いから」
 そう言って、明里は二人を二階の自室へと案内する。まるで、二人のやりとりが目に入っていないようだ。
「どうしたの? 二人とも目そんなに大きくして」
 明里はキョトンと愛衣と笑麻を見ている。
「だって、明里ちゃんのパパとママ喧嘩しているよ?」
 案内されるままに明かりの部屋に向かうが、今も母親の怒鳴り声といい加減うざったくなっているのか父親の怒鳴り声も聞こえてくる。どうやらますますエスカレートしているようだ。
「止めなくていいの?」
 二人の問いに明里はケロッとしていて、そればかりかキャラキャラと笑っている。
「いつものことだもん。大丈夫だよ。飽きれば止めるって。
 愛衣ちゃん達の所でも同じでしょ?
 おかーさんは、おとーさんが邪魔なんだよ。お家にいるといつもあーだもん。
 聡子ちゃんちも、絵里ちゃんちも同じだって言っていたし。夫婦げんかはいつもみんなやっていることなんだよ。
 千香ちゃんちなんておとーさんとおかーさん、りこんしちゃったんだって言ってたよ。おかーさんに好きな人できて家出て行っちゃったんだって」
 愛衣と笑麻は明里の言葉に更に目大きく見開いて顔を見合わせる。
 母親が父親以外の人を好きになって出ていく?
 それも、家族全員を残して・・・??
 知らなかった事実にただ、驚くばかりだ。それどころか、下の喧嘩は更にエスカレートしていき「お前が出て行け」とか「あんたこそ出て行ってよ」とかやり出すと、明里は呑気のオレンジジュースを啜りながら、「また、やっている―――」となれたような態度だった。これは、日常茶飯事にあるべき光景なのだろうか。
 もしかして、自分たちが居ないときは大好きな両親も喧嘩をしているのだろうか?
 あの父が母に手を挙げる?そればかりか、口汚く罵り合い最終的には、他に好きな人が出来てしまうと言うのだろうか。
 時々笑麻達は母親達が何か喧嘩することもあることを知っている。だが、こんな神経に障るような喧嘩ではなく、その時の母親を見ると胸が痛くなって、泣きたくなってしまう気分になる。時々母親が泣いていることもあるが、母が泣くとすぐに父が困ったような溜息をついて、なだめているのだ。それが仲直りの挨拶のように、父は母を優しく抱きしめている。
 それを見ると、良かったと幸せな気分になる。
 やっぱり大好きな両親は、仲良しでいて欲しい。
 だけれど、知らないところではもっとひどい喧嘩をしているのだろうか?子供達がいるからそんなに派手な喧嘩をしていないだけで、もしかしたら、互いが互いを嫌いだったりするのだろうか?
 そう言えば、今日は二人とも家にいる日だ。
 まさか、母が幼稚園の友人のように家を出ていってしまったりはしてないだろうか?そう思うと不安で不安で溜まらなくなってしまう。
 大好きな両親が喧嘩をしていたら悲しい。
 大好きな母が家を出ていってしまったら、悲しくて悲しくて生きていけなくなってしまう。
「帰る!!」
 二人は同時に叫ぶとドタドタと階段を駆け下り、慌てて靴を履くと慣れない道順を必死に思い出しながら、家を目指す。突然のことに明里はただ呆然と見送ることしかできなかった。
 来るときは母に連れてきて貰ったのだ。だが、そんなに遠くへ来たわけではなかったし何とかなるはずだ。歩いて10分ぐらいの道のり、二人は手を繋いでキョロキョロと辺りを見渡しながら、覚えのある道をある行く。判らなくなると、愛衣が時々反則技を使いながら、20分ほどかけて我が家へとたどり着いたのだった。
「ママ! パパ!」
 玄関を上げて靴を乱暴に脱ぐと、リビングに足を向けるがそこには人影がなく、キッチンやダイニングも見るがそこにもいない。書斎へのドアを開けて覗き込む。そこではナルが英字新聞を片手に、麻衣の淹れた紅茶を飲んでいた。双子は辺りを見渡すが麻衣の姿を見つけることができず、不安になる。キッチンにもリビングにもいないから、父の仕事部屋にいると思ったのだ。
 もしかして、ナルと喧嘩して家を出て行ってしまったのだろうか?
 そんなことはあり得ないと思う反面、居るはずの母親の姿が見えないと不安になってしまう。
 ナルはいきなりの闖入者に、不機嫌そうに顔を上げるが、双子の娘達を視野に納めるなり、僅かに眉をひそめる。
 友人の家に遊びに行っているはずの娘二人が、息を切らして帰ってきたかと思うと、自分を凝視していた目が、見る見るうちに潤みだし不安そうな顔で、今にも泣き出しそうに歪んでいくのだ。
「どうした」
 抑揚の欠けた声に、怒りのような苛立ちは感じられない。だが、例えナルが苛ついていたとしても、それを自分たちに悟らせるようなことはないと言うことを、愛衣も笑麻も知っているため不安に思う。
「ママは?」
 小さな声で笑麻が問いかける。
「麻衣は洗濯物を干しに上に行っているが――お前達、二人だけで帰ってきたのか?」
 先ほど麻衣に連れられて友人の家に遊びに行っていることを、ナルは知っている。まだ、子供達だけで出歩かせるのは、不安だと麻衣が言っていたからだ。帰りも迎えに行くから電話をするようにと携帯を渡して居るぐらいだ。
 だが、麻衣は今二階で洗濯物を干している最中だというのに、二人は息を切らして帰ってきている。だが、二人はナルの言葉が耳に入らなかったのだろう。ナルの言葉通り階段を軽快な足取りで下りてくる音を聞くと、二人同時に走り出すと、階段から下りてきた麻衣に抱きつく。
「ママ!!」
 今家にいないはずの二人の姿を見て、麻衣も驚いているようだった。が、とりあえず泣きながら抱きついてくる二人をあやして、訳を聞く。
「明里ちゃんちのね、パパとママ喧嘩していたの」
「パパがお家にいると、いつもママと喧嘩しているんだって、明里ちゃんは言うの」
「明里ちゃんちだけじゃなくて、聡子ちゃんの家も、絵里ちゃん家も同じだって言うの」
「千香ちゃんちはね、パパとママがりこんしちゃって、ママがお家を出て行っちゃったからもう逢えないって言うんだよ」
「でね、今日パパもママもお家にいるから、もしかして、愛衣達が知らない間に喧嘩しているのかと思ったの」
「パパがママをお家から追い出して、ママは他の人を好きになって笑麻達を置いてどっかに行っちゃうかと思ったの」
 グシュグシュ泣きながら訴えてくる二人に、さすがの麻衣も呆れて目を見張るが、二人の身体をぎゅぅっと抱きしめる。不安に怯える双子達を安心させるかのように、優しくそれでいて力一杯に胸に抱き込む。
「可愛い笑麻や愛衣を置いてどこにも行かないよ?
 大丈夫。私もナルも愛衣や笑麻や、唯人や咲也を置いてどこにも行かないから。皆可愛い子達だもん、置いてどこにも行けないよ」
 ニッコリと微笑んで麻衣が言うと二人は涙でぐしゃぐしゃになった顔を、手で拭うとナルと麻衣を交互に見る。
「本当?」
 ナルは笑麻を抱き上げて足の上に載せてあやす。
「いつ、喧嘩をした」
 麻衣がよく言うのは「ご飯食べてよ」「仕事ばかりしないで」「たまには子供達の相手して上げてよ」等々であり、ナルはそれにかまいもしない。結果喧嘩にさえならないのだ。そして、それは遙か昔から行われてきた年中行事でさえある。
 犬も喰わないどころか、それが彼ら流のコミュニケーションの取り方の一つとなっているのだ。まだ、そこまでわからない双子の姉妹には、それが大きな喧嘩のようにも思えるのだろう。
「愛衣や笑麻の知らないところで喧嘩しているのかと思ったの」
 だから、慌てて帰ってきたという。
 ナルは二人の頭を簡単になでて、喧嘩はしないから遊んでこい。と言って二人を二階へとおいやる。
 そして、新聞に視線を戻す前一言
「遊びに行かせるなら、もう少しましな家にしろ」
 と、実に似合わない父親らしい発言に、麻衣は一瞬目を見開くが「はぁ〜い」と呑気な返事を返したのだった。




 二階には兄たちがおり、愛衣と笑麻は両親の二人は本当に喧嘩をしないのか、と尋ねた。いきなりの質問に双子の兄はびっくりしたが、訳を聞くと唯人が「プッ」と吹き出す。
「お兄ちゃま?」
 何で唯人がいきなり笑い出すのか、愛衣にも笑麻にも判らない。
「いいかい二人とも、お父さんとお母さんはものすっっっっっっっっっごくラブラブなんだから、そんな倦怠期の夫婦みたいな喧嘩しないよ」
「ラブラブ?」
「けんたいき?」
 聞き慣れない単語に、二人は首を傾げて二人の兄を見上げる。
 咲也も唯人も楽しそうに笑って、二人を見下ろしている。
「倦怠期って言うのはね、互いがいるのが当たり前になっていて、ありがたみを感じてないと言うか…相手をうっと惜しく思い始めているんだよ。
 邪魔に思えてくるから、側にいることを嫌がるの。
 だけど、お母さんやお父さん達みたいのはいつまでも恋人気分が抜けない、ラブラブバカップルって言うんだよ」
「バカップル?」
 ますますわけの分からない言葉に、愛衣と笑麻は???マークをたくさん浮かべる。
「変な言葉教えるなよ」
 咲也が一応唯人をいさめるが、唯人はにこにこ顔で「安原のおじさんや滝川のおじさんが言っていたことなんだから、変なコトじゃないよ」と言い返す。いや、彼らが言うからこそ充分に変なことなのだろうが、まだそこまで判らない齢六歳の兄達。
「ん〜〜〜百聞は一見にしかず。だから、見に行こうか?
 そ〜〜〜〜〜っとだよ」
 唯人が口元に指をやって「しぃ〜〜〜」っとやると、笑麻や愛衣もまねて「しぃ〜〜〜」といいながら抜き足差し足忍び足で階段を下りていく。
 書斎のドアは開きっぱなしになっていて、父と母の声が良く聞こえてくる。勘の良い父に気付かれないように、そぉ〜〜〜〜っと柱のカゲから室内を覗き込むと、二人ともドアには背を向けていて気が付いている様子はなかった。
「でも、びっくりしたな。まさか笑麻と愛衣があんな心配するなんて思わなかった」
 麻衣も幼稚園に行くたびに、お母さん達から色々な話やうわさ話を効く。だいたいが、夫の悪口というより邪魔者発言だったりするのだ。
 麻衣から見ても不思議な現象。なぜ、邪魔に思えるのかが判らない。麻衣でさえ不思議なのだからさぞかし、小さな子供達から見たら未知の世界、いや自分たちの取り巻く世界が壊れていくように思えたのかもしれない。だから、慌てて帰ってきたのだろう。
「お前が所構わず、僕にあれしろ、これしろと余計なことを言うからじゃないのか?」
 英字新聞から目を離さず言うナルの言葉に、麻衣は頬を軽く膨らませる。
「私余計なこと言っていないもん。
 必要なことでしょ? ご飯食べるのも、仕事しないで休むのも、子供達とスキンシップとる事も、必要で大切なことだよ?」
 と言って、麻衣は横から手を伸ばすとナルが読んでいる新聞を取り上げる。
 眉をしかめて苛立ちの表情を浮かべるナルに、笑麻と愛衣は不安そうに兄を見上げているが、兄たちはなんだか非常に楽しそうに室内を見ている。視線を室内に戻すと、笑麻や愛衣が恐れていたような雰囲気にはならない。
 麻衣はニコニコと笑顔を浮かべて、新聞をナルの手の届かないところにどかし、ナルは溜息を一つついておしまいだ。言い争いにすらならないばかりか、めったに笑わないナルの顔に笑みが浮かぶ。自分達が見るどの笑みよりも優しい気がして、思わず紅くなってしまう笑麻と愛衣。
「構って欲しいなら、そう言え」
 と言うなり、腕を伸ばして麻衣の腕を掴むと、更に空いている方の腕で後頭部に腕を伸ばすとグイッと自分の方に引き寄せて、唇に自分のを重ね合わせる。
 いきなりのことに麻衣は初めジタバタしていたが、やがて諦めたようにナルの腕の中で静になり、やがて麻衣の腕もナルの首に絡む。
 映画のワンシーンのような光景に、愛衣と笑麻はただ唖然として見つめている。
「――上に子供達がいるのに」
 微かに声がうわずっている麻衣の囁きが漏れ聞こえてくる。
「遊びに夢中で、しばらく下りてこないだろう」
 それでなくても、むやみやたらに子供達はこの部屋には入ってこないのだから。 
 ナルの低い声に、唯人と咲也は肩をすくめると、妹たちを促して二階へと戻っていく。
 父の母への溺愛ぶりは、いやって言うほど知っているのだ。妹たちが不安に思う要素など、両親の間にはあるわけがない。例え自分達(妹たちは含まれない)は叩き出されてもあの父親が母親を追い出すことは、死んでもありえないことなのだ。
「いいかい、愛衣と笑麻。
 ああいうのをラブラブバカップルって言うんだよ」
 唯人と咲也は百聞は一見にしかずとばかりに、二人にそのことを教えたのだった。
 余談ではあるが、彼ら二人もそうやって教えて貰ったという・・・誰に、とは言わないが。


 ――後日 保育園の帰り道のことであった。
 笑麻と愛衣はふと足を止めて、彼ら二人をジッと見ていた。二人が何かを見ていることに気が付いた麻衣とナルは、自然とその視線を追いそれを視認したとたん麻衣が慌てる。
 女子高生と男子高生の二人が、道ばたで堂々とキスをしていたのだ。
 愛衣と笑麻はじぃっっっと二人を見ていたが、麻衣に急ぐよう促されると、テコテコと着いていく。
「ねぇ、ママ」
「なに?」
 ナルは全く何も思っていないようで、双子を車の後部座席に座らせて行くが、麻衣はチラリとその二人を視線に納め、こんな道ばたでキス何てしないで貰いたいな…子供達にはあまり見せたくはない。と思っていたときに笑麻が無邪気な顔で爆弾投下。
「ああいうの、ママ達と同じラブラブバカップルと言うんでしょ?」
 と聞いてくるのだ。

は?

 思わず麻衣は笑顔のまま固まる。
「お兄ちゃまがね、言っていたの。
 ママとパパはラブラブバカップルなんだよって。あそこのおねーちゃんとおにーちゃんみたいにしているときにね、教えてくれたの」

 ニコニコニコニコの笑麻と愛衣。
 ダラダラダラダラの麻衣と、無表情のナル。

「うわぁ〜〜〜〜〜〜んっ、だって、お父さんとお母さんが書斎のドア開けっ放しでしているのが悪いんじゃんかよぉぉ〜〜〜〜〜!!」
 その夜、唯人と咲也の悲鳴がディビス家に響いたという。



 後日談として、安原には非常に多量の雑務データー処理が山のようにディスクの上に重ね置きされており、さらには、安原と滝川ともにしばらく美味しいお茶とコーヒーにありつけなかったという。
 それはどうしてか…あえて明言する必要もないだろう。

「僕も悪いのか?」
 とある夜、とある美貌の青年のミニチュア版双子の美少年の一人が、闇夜の中うめいていたという。それは、止めたにもかかわらず巻き添えを食らった片割れのうめきだった。







☆ ☆☆ 作者の戯言 ☆☆☆
 「残夏の森」連載中にいきなり、場違いな話アップ(笑)少し、小休憩と参りましょう。あれは最初から最後までペースが崩れないので(何のとは聞かないでねv)、気分転換も必要です(笑)
 未来予想図。前回はまだにーちゃん達の発覚話だったのに、いきなり四人とも成長しています(笑)
 これから、しばらくはこのままの年ぐらいかなぁ〜。イギリスにいた頃のお話や、他にも書きたいなぁ〜とは思っているけれど、実は今回お兄ちゃん達大人しいです。三話目からは・・・・ニヤリ。
 次がいつアップされるか判らないけれど、番外編として時々アップしていくので、読んでやって下さいませvこちらの話は、のほほん系を必死になって目指しております(笑)
 どこまで、願望が達成できるか?

おしまい