けっとう



 幼稚園に双子の娘達を迎えに言った麻衣は、二人の有様を見て思わずあっけに取られる。
 姉にあたる笑麻は綺麗にツインテールに結ってあった髪は、鳥の巣のようにぼさぼさで、綺麗に着ていたはずの制服はボタンが弾けとび、埃まみれになっており、愛らしいその顔はぶすっりとふくれつらだ。頬に擦り傷があるのは愛嬌というべきか。迷うところである。
 対する妹にあたる愛衣は制服はどこも着乱れてはいなかったが、綺麗に結ったはずのポニーテールはほどかれ、艶やかな黒髪が背中に流れている。そして、愛らしい顔は先ほどまで泣いていたのか、両目が真っ赤になって瞼が若干腫れていた。そして、いまだにヒャックリが止まる様子もなく、えぐえぐといい続けている。
「あんた達・・・・どうしたの・・・・・・」
 迎えに来た麻衣の姿に気がついた二人・・・特に愛衣は、泣き止んでいたはずなのに再び大泣き。まるで、蛇口が壊れてしまったかのようにその両目から、止め処もなく涙があふれて麻衣にしがみついてワンワンと泣き続ける。
 一体何があったというのだろうか?
 全知全能ではない麻衣は何がなんだかわからないが、とりあえず自分にしがみついて泣き続ける愛衣の身体を抱き上げる。
 すっかりと重みの増した身体を抱き上げるのは、すでにかなりきついといっても過言ではない。ナルは軽々と抱き上げるが自分には結構堪えるのだが、可愛い娘の大泣きにただ事ではないことを感じ取った麻衣は、小さな赤ん坊のように泣き続ける愛衣を抱き上げて、背中を優しく撫でながらなだめる。
「一体何があったの?」
 笑麻に聞くがいつもは親の問いにはかわいらしく答える笑麻も、今はそんな余裕がないのか麻衣の上着をぎゅっと握り締めたまま、唇を真一文字に結ぶ。まるで何かを堪えるかのように地面を凝視している。
 さて・・・・どうしたものか。
 まだ、何人かの園児と迎えに来た保護者達が興味心身にこちらを見ているのが判る。さて、二人の担当の保母に話を聞くべきか、それともオフィスに戻ってから話を聞きだすべきか、迷っていると自分に抱きついて泣いていた愛衣が、震えた声で問いかけてくる。
「愛衣達・・・あくまなの?」
 麻衣は、うるうると潤んだ目で自分を見上げてくる娘をしばらく見つめる。
 少しの間・・・いや、かなりの間を使って今聞こえた言葉の意味を考え・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


 たっぷり三十秒ほど沈黙した後、麻衣は間抜けな声を漏らした。
 我が娘ながら突然何を言い出すか想像もつかない。
 おそらく、ナルを含めた人間達はさすが麻衣の娘だけあって、いつも突拍子もないことを言い出す。さすが血は争えない・・・と感想を漏らすかもしれないが、とりあえずそんなことを言う様な人間は幸運にもこの時この場にはいなかった。
「愛衣達、パパとママの子供じゃないの?
 おにいちゃまたちの妹じゃないの?」
 一体なんで、そんな質問が出てくるのだろうか?
 まったくもって検討が付かない。
 そもそも、上も下も両方ともナルくりそつである。疑う余地無しなまでに、将来が楽しみだ。
 それがよりにもよってなぜ「悪魔」となるのかが判らない。
「あたしも、愛衣もママとパパの子供・・・だよね?」
 愛衣ばかりか笑麻も同じようなことを聞いてくる。
 一体全体何があったのだろうか?
 麻衣は思わず誰か説明してくれと叫びたくなったが、二人を交互に見てにっこりと微笑を浮かべる。
「もちろん、私とナルの娘達だよ」
「本当・・・・・?」
 何をそんなに不安に思うのかわからないが、麻衣は力強くうなずき返す。
「二人ともナルの・・・パパのいいところいっぱいもらっているから大丈夫」
 本当いいところだけをもらってきてくれてよかったv
 というのは心の声だったりもする。きっと、誰もがそう心の中で呟いていることだろう。
「とりあえず、オフィス行こうか? パパもリンさんや安原さんも待っているよ。
 ぼーさんや、綾子お姉ちゃんも来ているかも」
 麻衣が帰ろう?と促すと二人とも漸く笑みをうっすらと浮かべたのだった。
















 さて、オフィスへと向かう道中二人の話を聞いた麻衣は、思わず苦笑をもらしてしまう。
 と、言うのも。
「幼稚園にねすっごく嫌な男の子がいるの」
 麻衣に自分達の不安の原因を解消してもらって安心した反動なのか、笑麻は先ほどの落ち込みようが嘘のように、ぷりぷりと怒りながらことの顛末を話してくれた。
 ささやかなことである。
 ある意味この年代では良くある内容だ。
 幼稚園の中でとくに目立つのが笑麻と愛衣という双子である。
 たまたま、この幼稚園には二人以外に双子は存在しない。鏡合わせのようにそっくりな双子の娘はそれだけでも目を引くのに、ナルの類まれなる容姿をしっかりと引き継いでいるため、チープな言い方だが大変な美少女である。親の欲目を抜いても可愛い。そりゃもう、我が娘ながら傾国の美女間違いなし!と太鼓判を押せる。そして、不思議なことにその両目は左右の色外が違うのだ。
 と、ここまでくれば人目を集めないわけがない。
 そして、目立つ子供というのは何かとターゲットにされがちであった。
「いつも愛衣をいじめるの。
 今日もね、愛衣の髪の毛引っ張っていじめてたの。
 愛衣がいくらやめてっていっても、「泣き虫娘」っていってやめてくんないの。だから、あたしがやりかえしてやったんだ」
 人見知りをする愛衣と違って笑麻は気が非常に強い。
 おそらく自分とナルが持っているサイコメトリーの能力を不安定ながらも受け継いでしまったせいだろう。愛衣は、激しい人見知りをする子供になっていた。ただ、一度慣れてしまうと逆に恐ろしいほど人懐こくなるのだが・・・・
 同じ双子といっても笑麻は能力らしいものをなにも持ってはいなかった。自分のように後天的に覚醒する可能性もあるのだが、今の段階ではそれらしい片鱗を見せていることはない。
 天真爛漫無邪気そのもので、愛衣のように人見知りをすることはないのだが・・・・そんな自分の片割れを姉でもある自分が守らなければいけないという使命に燃えているのか、愛衣に危害を加えようとするものはすべて敵とみなすようになってしまった。
 そういうのも、二人は大変かわいらしいので良からぬことをたくらむ大人たちは、実は後を絶たなかったりする。だが、二人が今まで被害らしい被害にあわずにすんだのは、愛衣の能力のおかげとさらに、その人見知りの強さにもあるのだが・・・すっかりと笑麻には刷り込み現象が起きており、愛衣が嫌がる相手=危険人物という方程式が成り立ってしまっている。
 あながち間違えではないので今のところ誰もそのことを否定するものはいないのだが・・・
 笑麻はすっかりと愛衣のナイトになりきり、愛衣に危害(いじめ)を加えようとする幼稚園児にまで遠慮がなくなってしまったのは、実は頭痛の種だったりもする。
「い〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っつも、愛衣をいじめるんだよ。
 今日だって、ママが綺麗に結ってくれったポニーテールぐしゃぐしゃにしちゃうし。
 愛衣が優しくてやり返せないからって、いい気になっているの」
 ぷっくんと頬を膨らませて腕を組みながら告げる笑麻は、大変ご立腹なのだろうか思わず怒っている顔も可愛いなぁ・・・と、どっかの親ばかに何も言い返せなくなるようなことを考えていたりもする。
「だからね、あたしがあいつの髪の毛おもいっきしむしってやったの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 えらいでしょ?
 といいたげな笑麻に対し麻衣は笑顔を引きつらせる。


 引っ張った・・・ではなくて、むしった・・・・?っていったよねぇ・・・・むしったってことは、たばで抜けたって事かなぁ・・・イヤだなぁ。謝りに行かないとマズイかなぁ。でも、幼稚園の先生何も言ってこなかったしなぁ、どこのお家の子だろう・・・後で、電話して聞かないとやっぱりまずいよねぇ・・・ああ、禿げになっていたらどうしよー
 ここは、やっぱりナルに謝りに行って貰おう。
 きっと、自分が行くよりも簡単に許してくれるはずだ。
 あの顔はそのぐらいにしか使い道がない。



 何気なく自分の夫に対して失礼なことを思いながら、思わずどこか遠くを見てしまいたくなっても仕方ない。まぁ、きっと数本抜けただけだと思うけれど・・・・というか思いたいけど・・・・・
「んでね、あいつってば男の癖にあたしのこと叩いたんだよ。
 男のくせにぼーりょくでしか、かいけつできないなんてサイテーだよね
 ひどいんだよ。ほっぺたつねるしめちゃくちゃ叩くし・・・・あたしが、最後まで泣かなくてやり返し続けるから、あいつのほうが泣き出しちゃったの。そしてら、他の男の子達がそいつのこと、泣き虫〜とか、女に負けた〜とか言い出したら、あたしと愛衣のことあくまだって言うんだよ。
 だから、人間の僕は負けたんだって。あくまになんか勝てるはずないって言いながら、叩いてきたの」
 で、そのまま取っ組み合いのけんかになったという。
 だから、笑麻は埃まみれのぐちゃぐちゃなのだ・・・・
「笑麻、悪くないよ・・・・悪いの愛衣なの・・・愛衣、すぐ泣いちゃうから・・・・・・・・・・」
 だから、笑麻のことは怒らないでと必死に訴えてくる愛衣の頭を撫でて、麻衣は二人を交互に見る。
「笑麻はおねえちゃんだから、愛衣を守ったんだよね?
 でもね、暴力はだめだよ。暴力は相手も自分も痛い思いしちゃうでしょ?
 いっぱいいっぱい、痛い思いするでしょ? だからね、暴力はやめようね」
「でも、あいつだって髪引っ張るし叩いてくるし、スカートめくるし、愛衣が嫌がるのに抱きつくし・・・・・・」
 麻衣に怒られるとは思ってもいなかったのだろう。笑麻の両目にも見る見るうちに涙が盛り上がってくる。必死に泣くものかって堪えているのが判る。
「うん。その男の子もいけないことをしているよねぇ」
 っていうか、はっきりいってセクハラである。
 このことを、二人の息子が聞いていたら・・・・血の雨が降るな・・・と思わずにはいられない。
「あのね、笑麻やりかえすんなら暴力じゃやなくてもいっぱいやりかたはあるよ?
  頭を使って、優雅で綺麗に戦わなくちゃ」
「パパみたいに?」
「そっ、パパみたいに」
 それはそれで、大変恐ろしいことになりかねないが暴力や低俗な言葉の嵐よりかはましである・・・・たぶん。
「判った。あたしいっぱい勉強して、パパみたいに頭良くなって、男なんかに負けないぐらい強くなる!!そんで、愛衣を守ってあげるの!!!男なんかに負けないんだから!!!!」
 握りこぶしを作って声高々に宣言する幼稚園児・・・・・・
 いいのか? これで・・・・・・・・・・非常に不安が募る母。
「笑麻・・・かっこいい・・・・・」
 そして、そんな双子の姉を尊敬の眼差しで見る妹・・・・・
 やっぱり、不安が募り続ける母・・・・・・・・・・
「愛衣、がんばって頭良くなって、パパみたいに素敵な人みつけようねv」
「ママとパパみたいにラブラブになろうねv」
 パパみたいに素敵な人って・・・・外見のことだろうか。それとも中身だろうか・・・・素直に、進められないのがナルという人物なのだが・・・麻衣はそのことは聞かなかったふりをする。そもそも、そんな男を生涯の伴侶に選んでいる自分は、人の趣味をあれこれ言えたぎりではない・・・・のだから。
 なんで、この子たちって普通とはちょっと違うんだろう・・・
 やっぱり血は争えないんだろうか・・・
 いや、そもそも「普通」って何なんだろ・・・?
 そんなやり取りをしたことを、オフィスに戻ってその場にいた皆・・・滝川、綾子、安原にすると皆それぞれの微妙な表情になる。
 皆が皆、ほぼ麻衣と同様の不安を抱いたことは言うまでもない。
 どこかで、何かがずれている・・・・・コメントのしようがない沈黙が辺りに漂う。
「でも、それってあれじゃない?」
 一人早く立ち直った綾子は、ニヤリと口元をゆがめる。
「好きな子ほど苛めたくなるっていう、男の子特有の心理じゃない?」
 男の子特有とは限らないが、男の子に多く見られると思われる心理行動である。
「あ〜〜〜、私もそれ思ったの。
 小学生ぐらいまではあるよね。気になる子の気を引きたいからっていじめるって言うの。あれって、逆効果にしかならないのにやるやつっているいる」
 そして、女二人はこういうことがあったとか思い出話に花咲かせるが、そんな二人の声をかき消すかのような絶叫がオフィスに響く。
「笑麻!愛衣!!どうしちゃったの!?」
 おーまい、がっと外国人らしいオーバーアクションをしながら叫んだのは出入り口で立ち尽くしている、双子の兄達。
 あちゃぁ・・・まだ、直していなかった。
 と、思い至った時はすでにとき遅し。
 唯人と咲夜はまるでムンクの叫びのようなかっこうで、呆然としていた。
「笑麻の顔に擦り傷がぁぁぁぁぁ!!! こんな可愛い顔なのにぃぃぃぃぃ!!!」
 咲夜がやはり、ムンクの顔のまま絶叫をあげる。
 オフィスにいた大人連中の鼓膜を、ずきゅーんと射抜いたのは当然かもしれない。
「なんてひどい・・・僕達の可愛い可愛い、妹をこんな目に合わせるなんて・・・・許せない、どこのどいつ?
 僕達がきっちりと復讐してあげるから、安心してね」
 唯人が目をらんらんと輝かせながら言うが、すでに落ち着いてしまっている笑麻は、自分でやり返したから平気と言い放つ。
 だが、それで落ち着くわけがない。
「おにいちゃまたちはいいの!! これは、あたしとあいつの戦いなんだから。あたしが、絶対に勝つのぉ〜〜〜〜〜!!!」
 地団太をしながら絶叫する笑麻は、まだまだ子供らしいのだが・・・・・
「絶対に・・・・絶対に・・・生まれてきたことを、後悔させてやるんだから・・・・」
 ぜぇはぁぜぇはぁ・・・と息も荒く宣言した後、ポツリと漏らしたときの表情は・・・・・




 思わず、滝川、安原、綾子に麻衣はこの子たちには父のいい部分だけが継がれたはずではなかったのか?と思ってしまったという。








 さて、数日後のことである。
 笑麻と愛衣はいつものごとく仲良く、母が迎えに来るのを教室で待っていた。
 室内には他に誰もいない。皆親がすでに迎えに来たか、外で遊びながら待っているのだ。
 さて、二人でおとなしく絵本を読んでいるとからり・・・とドアが開く音が聞こえた。
 母親が来たのかな?と思って顔を上げた二人の眉は、対照的に様変わりをする。
 笑麻は逆八の字に眉がつりあがり、不機嫌もあらわな顔。
 愛衣は八の字に眉が垂れ下がり、怯えを隠せない様子だ。
 無意識のうちに愛衣の手が笑麻の手を握り締めている時点で、どれだけ怯えているかが判るだろう。そんな、愛衣をかばうように笑麻は一歩前に出ると胸をそらす。
「なんか御用ですか」
 つんけんつんけんした態度だが、男の子はいつものようにつっかかってこない。
 なんだか、非常に落ち着かない様子でもじもじとしている。
「あ・・・あのな・・・・・」
「なんですか」
 一言言えばじろり・・・と睨まれて黙り込む男の子。
 いくら幼子とはいえ、美少女ににらみつけられれば怖いのである。
 笑麻は男の子から一瞬たりとも目を離さない。きっと、油断した隙にまた飛び掛ってくるに違いないんだから。
 愛衣は絶対に守るって、ママに約束したんだから。
 じぃ〜〜〜〜〜〜〜っと、凝視する。
「あ・・・・あのな、俺・・実は・・・・」
「だから、何の用ですかって聞いているの!!」
 どうやら、気が短いという点もナルににてしまったらしい。嫌いな相手を目の前にしているせいか、笑麻は苛立ちを隠しきれない様子だ。
 その剣幕に一瞬たじろいでしまう男の子。
 いつもと微妙に相手の様子が違うことに、愛衣は気がついたのだが笑麻はまったく気がつかない。なんか、いつものように嫌な感じはしないのである。だけれど、やっぱり自分から声を掛けるのは怖い・・・・でも、声を掛けたほうがいいのかなぁ・・・・と逡巡した時、ドアがからりと開く。


「俺は、愛衣ちゃんがす・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 少年が何か言いかける言葉にかぶさるように、笑麻と愛衣は同時に声を上げたのだった。


「ぱぱだぁぁぁ!!!!」


 入り口に立つ人影を見た瞬間二人の頭の中から男のことなど綺麗さっぱりと忘れてしまう。
 めったに、幼稚園に迎えに来てくれない父の姿をそこに見つけたからだ。二人は同時に駆け出して父の両足にそれぞれしがみつく。
「パパ、どうしたの?」
「ママは?」
「麻衣は風邪で調子が良くないから、家で寝ている」
 ナルのその一言に二人は、嬉しげな瞬間から悲しげな顔に変わる。
 朝は元気だったけれど、そういえばコンコンと辛そうな咳をしていたのを思い出したのだ。
「ママ、病気なの?」
「大丈夫?」
「すぐに治る。お前達は寝室に近寄るなよ」
「は〜〜〜〜い」
 二人は良い子のお返事をすると、顔を真っ赤にして立ち尽くしている保母さんに帰りの挨拶をして、父親と仲良く手をつないで帰路へとつくのであった。

 とうぜん、父の姿を見た瞬間から一度たりとも男の子のことなど思い出してもいない。







 
「俺は・・・・実は・・・・愛衣ちゃんのことが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 すでに相手は帰ってしまったというのに、男の子は、壊れたレコードのように繰り返していた。
 あわれ、こうして名もなき幼稚園児の初恋は見事に終わったのである。
 少年の恋敵が、少女達の実の父親だということを気がつくよしもなかった・・・・・・










「ねぇ、笑麻・・・・あの子、帰り何が言いたかったんだろうね」
 その夜、ベッドにもぐりこんで愛衣はふと帰り際のことを思い出して、笑麻に問いかける。
「きっと、けっとうを申し込むつもりだったんだよ。
 この前、あたしに負けたのきっと根に持っているんだ」
「けっとうってしっている、男の人二人が砂漠のど真ん中で拳銃で打ち合うんだよね」
 間違っているとは言いがたいが、正解ともいえないことを愛衣は思い出しながら言う。おそらく、○曜日洋画劇場とかでやっている映画でも見たのだろう。だいたい、いまどきそんな決闘・・・というより、決闘なんてするもの自体がいないだろうが。
「でも、ママがけんかしちゃだめってゆったよ?」
「大丈夫。あたし、もっと綺麗な勝ち方するってママと約束したもん」
「そっか、パパみたいに強くなるんだもんね」
 なんだか、大いに勘違いしている二人はにっこりと笑い合うと、「そのへんの男の子になんて絶対に負けないんだから」
 と合言葉にように呟きながら、穏やかな寝息を立て始めた。
 





 麻衣でなくても、やはり大いに気になるお子達の未来・・・はたしていかに?



☆☆☆ 天華の戯言 ☆☆☆
 久しぶりの、未来予想図・・・・書いたの久しぶりなせいか、二人の性格変わっています・・・・・(爆)
 二人というより笑麻の性格がかなり・・・・
 責任感の強いお子だと思ってくだされv


 タイトルの「けっとう」は「決闘」でも「血統」でもお好きな字を当てはめてくださいませv