いつの日か・・・・





 いつか訪れてくれる日を、麻衣はただひたすら待つことしかできなかった・・・・・













 日がすっかりと暮れ釣り灯籠に明かりが灯り始めた頃、軽い足音が屋敷の中響き渡る。
 いつもはやれ、おしとやかにしろ。廊下は走る物ではないと口やかましいぐらいにあれこれ言う、乳兄弟の多恵がこの日は彼女にしては珍しく、頬を紅潮させ慌ただしい様子で廊下を駆けてゆく。
 気が急いているのか、さほど広くないはずの屋敷だというのに、この時ばかりは広く感じられた。
 普段走ったりしない多恵は短い距離であろうともすぐに息が切れるが、息を整える間もなく主の寝所へと飛び込む。
「姫様、殿からお使いが来まして、明日の早朝には屋敷に戻ってこられるそうです」
 だが室内に目を向けた瞬間晴れやかな表情がとたんに曇る。
「姫様、起きていられてたのですか?」
 寝台で横になっていると思っていた麻衣が、単の上に袿を羽織って起きていたのを見た多恵は溜息を一つつくと麻衣の傍に慌てて近寄る。
「殿が戻ってこられるまでには治されるのではなかったのですか? 明日にはお戻り遊ばされるのですから、今無理に身を起こしてはぶり返してしまいますよ?」
 麻衣を諫めるかのように言うが麻衣は全くの無反応。
 その事に多恵は微かに眉をひそめる。
 自分の主が長期留守にしていた夫の帰りを聞いて、浮き足立たないわけがないと言うのにまるで、自分の言葉など聞こえてないような様子だ。
 ここ数日体の調子を崩し寝込んでいた麻衣だが、今は顔色もだいぶ良くなり具合が悪い様子には見えないのだが、ぼんやりと心ここにあらずといった様子で、脇息にもたれ掛かりながら虚空を凝視している。
「姫様、お身体の調子が優れないのでしたら、横になっていなくては良くなりませんよ。それとも薬師を呼んで参りましょうか?」
 幾ら話しかけても何の反応も返ってこないことにますます、眉をひそめる。
 麻衣は数日前…正確に言えば15日ほど前から体調を崩した。
 初めはめずらしく月の障りがひどく、食べ物が三日もろくに喉を通らなかった。
 何か悪しき障りでもあったのではないかと、主不在中多恵を始め家の者は不安に陥ったが、鳴瀧が煎じた薬がようやく効いてきたのか、四日目には落ち着き始め、食事が取れるようになったのだが、それからすぐに今度は風邪を患ったらしく、高い熱が二日ほど続いた。
 間が悪いことに時期を同じくして鳴瀧は怨霊の調伏をするために、摂津の方へ下らなければならなくなってしまっい、しばらく屋敷を開けざるえなくなったのが11日ほど前のことだ。
 幾ら近いとはいえ摂津まで体調を崩した麻衣が付いていけるわけもなく、大人しく屋敷でお留守番する事になっていたのだ。
 11日が過ぎて怨霊の調伏も無事に終わり、明日の朝にはこちらに戻れるという鳴瀧からの文が来たというのに、麻衣は喜ぶ様子がない。
 いつもなら、例え病に倒れ体調をくずしていたとしても、すぐに自分の体調不良のことなど忘れて、新しい衣の用意をし始めたり、香を焚きしめたり、疲れている身を労って滋養のある食事の支度の指示など、事細かに動き始めるはずなのだが・・・・今の麻衣には、鳴瀧のことなど忘れてしまったかのように反応がない。
 今朝、朝餉を持ってきたときには機嫌も良く、風邪もほぼ治り鳴瀧の帰りを楽しみにしていたというのに、この数刻の間にいったい何があったのだろうか?と思ってしまう。
 多恵はしばらく考え込む。
 朝との雲泥の差。
 この数刻の間に何ががあったのだろう。だが、それは何か・・・・
 しばらく、考え込んでいるとふと今日麻衣に誰かが文を持ってきたことを思い出す。
 取り次いだのが女の童だったためそれは多恵を通すことなく麻衣にわたってしまって、送り主が誰かなのかを多恵は知らない。
 その文が原因なのだろうか?
 だが、このバイタリティー溢れる自分の主が、文如きでダメージを受けるような柔な性格をしているとはとうてい思えない。
「多恵って、夫を迎えてどのぐらいだっけ?」
 脈絡もなく突如問いかけられた問いに、多恵は目を丸くする。
 口を開いたかと思ったら、鳴瀧の事に関することではなく自分のことなのだ。
 驚かないわけがない。だが、素直に問いに答えてゆく。
「私ですか? 一年ほどになりますけれど、それがどうかいたしましたか??」
 麻衣のぼんやりとした視線は自分へと向けられる。
 その視線は多恵を見ていると言うよりもその腹部を見ていた。
 こんもりと盛り上がった腹部には、一つの命が宿っている。後、二月もすれば産声を上げるだろう。
「私が、鳴瀧と一緒になってどのぐらいたったけ?」
 脈絡のない質問に多恵はますます面食らう。
「三日夜の餅を召し上がられてから、一年と半年ほどになられます。それがどうかなさいました? そろそろ殿が浮気をするのではないかという心配ですか? あれgほどご心配はご無用ですよ。と申していますのに何がそんなに不安なのですか?
 殿は宿直か遠方での調伏以外、お屋敷でお過ごしになっておいでです。他に通うような所があるとは多恵にはとうてい思えませんけれど」
 あえて自分に聞かなくても夫である鳴瀧の動向は麻衣が熟知しているはずだ。
 確かに仕事と偽って余所に通うことは出来るだろう。
 世の大半の男達は妻や恋人にそう言い訳し、あっちの蝶、こちらの華と、まるで蜜を集める蜂の如く夜ごと日ごとふらふらしているのが、日常茶飯事だ。
 だが、鳴瀧は多忙の身であり、仕事と偽って出歩くにしては、屋敷にいる頻度が高すぎるし、その身から他の女の存在を感じさせる物は一切出てこない。
 あの鳴瀧のことだ。隠そうと思えば周りにばれないように見事に立ち回るだろう。
 だが、女とは不思議な物で、夫の心が自分から離れたときには何となく判るものなのだ。


 自分以外の存在が出来てしまったことを・・・・


 少なくとも現状では、鳴瀧にそのようなそぶりはなく、気配もまったくない。
 なにより、端から見ていいるほうが恥ずかしくなるほど、鳴瀧は妻である麻衣を愛しみ大切にしている。
 疑う方が相手を信じてないということになり、夜離れ(よがれ)の原因になるのではないかと、逆に多恵は心配になってくる。
 が、麻衣は多恵の心配など余所にため息を一つ付くと、細い声でぽつりと呟く。
「だよね…やっぱり、一年と半がもう過ぎているよねぇ…」
「姫様? いかがなされましたか?」
 一年半だろうと、十年だろうと三十年だろうと、あの鳴瀧が余所へ通うとは思えない多恵。いったいどうしたというのだろうか。
「鳴瀧にさ…他に、通うところか側室とか持つように進めるべきなのかなぁ……」
 主の突然の言葉に、多恵は目を大きく見開く。
「ひ、姫様? お身体の具合でも悪いのですか? 熱の病が頭に達してしまったのでしょうか・・・どうしましょう。殿もいらっしゃらないのに・・・・あ、あのすぐにお薬湯お持ちいたしましょうか? 胸が痛かったり吐き気などありませんか?」
 いきなり突拍子のないことをしたり、言い出したりする主だと常々思っていた多恵だが、この時ばかりは気が動転してしまって、わたわたと意味もなく立ったり座ったり、人を呼びに行こうかと廊下に出たかと思えば、麻衣から離れ在るのが不安ですぐに傍に戻る。
 なぜ、急にどうしてそんなことを思うようになったのか、全く多恵には判らなかった。
「もう、一年以上経つのに、まだ授からないなぁ…って思って」
 自分の腹部をさすりながら呟く麻衣。
 確かに、今月もきっちりと月の障りが来ていたから、麻衣が懐妊したと言うことはあり得ない。
「もしもさ、このまま出来そうになかったら、側室とかもたないと鳴瀧の血を引く子供が産まれないでしょ?
 それは問題だしぃ…側室とかじゃなくて、そのままその人と結婚って事もあるかもしれないけどさぁ………そうしたら、私が愛人って事になるのかなぁ…いや、そのまま忘れられて、夜離れって事もあり得るんだよねぇ……」
 ぽつり、ぽつり、と突拍子もない発言の理由とも言えるような、言えないようなことを麻衣は苦笑を浮かべながら言うのだった。その事にますます多恵は呆気にとられてしまう。
 どこの世に結婚して一年と半でそんなことを不安に思う人間がいるだろうか?
 確かにすぐに出来てしまう人間もいるが、数年経ってからということだってざらにもある。
 まして、麻衣はまだ若い。花の盛りといっても良いような年代である。不安に思うのはもう数年経ってからでも充分だと思うのだが。
 多恵はそう告げたのだが、麻衣はただ苦笑を漏らすばかりだ。
「姫様。そのようなこと今はお気になさらずとも平気ですわ。
 姫様はお身体が健やかな方ですよ。時期が来れば玉のように愛らしい赤さまが授かります。
 きっと、ここ数日間体調を崩されたからお気鬱になってしまったんですよ。
 明日には、殿もお戻りになりますし、そんなことすぐに気にならなくなりますわ。殿に相談されては如何です?そうすれば、きっと悩みなど吹き飛んでしまいますよ。
 それどころか、そんなことを殿に言ったらしばらく、姫様休ませていただけなくなるかもしれませんよ?」
 少しでも気分が上がるようにと、多恵は冗談を口にしながら笑い事にしてしまう。麻衣はさすがに多恵の言葉に顔を赤く染め、視線を外してしまうが、何かの折りに溜息が漏れる。
「姫様、お考えすぎはかえって良くないといいます。
 まだ、そんなに悩む必要はありえませんわ。
 それよりも、明日には殿が戻られるんですよ。早く体調を整えておかないと殿がご心配されますよ」
 多恵は麻衣の腕を引っ張ると、さっさと寝台に横たわらせる。
 麻衣の体調が優れないと鳴瀧の機嫌が非常に悪くなってしまうのだ。八つ当たりはごめんである。
 麻衣は促されるがまま横になるが、すぐに睡魔が襲ってくることはなかった。
 紙鑞も多恵によって消されてしまい、月明かりだけが僅かに差し込んでくる薄暗い室内。
 宿直などで居ないときもあるが、11日も鳴瀧がいなかったと言うことは、共に暮らすようになってからなかったせいか落ち着かない。
 確かに、まだ一年と半しか経っていないから、気にするようなことではないかもしれない。だが、一度気になってしまうとなかなか脳裏から離れてくれなかった。
 多恵は結婚してほんの四ヶ月ほどで懐妊した。これで、いつでも麻衣が産む子供の乳母が出来ると彼女は喜んでいたが、肝心の麻衣は今だ懐妊の兆しはない。
 初めは純粋に多恵の懐妊を喜べた麻衣なのだが、多恵が懐妊して八ヶ月が過ぎ、最近急に不安になってきたのだ。 
 今は、まだいい。
 若いからそのうちできると思える。
 だけど、もしもできなかったら?
 この世の中には子供の産めない女性もいるのだ。
 どこにも異常はない健康体だというのに、子供だけが授からず、けっきょく男の足が遠のき捨てられてしまった女の話も良く聞く。
 子供を産むことは女にとって、仕事の一つだ。
 それが、出来なければ意味がない――
 まして、鳴瀧のように特殊な血筋の上に優秀な力を持つ人間ならば、その血筋を絶やす訳にはいかない。
 だけど、自分から鳴瀧に他の人の所へ通うように進めることなんてできないし、鳴瀧が他の人の所へ通うなんていうのも耐えられない。
 自分より美人で、気だても良く、器量よしで鳴瀧の後見になれるだけの家を持つ姫なんてたくさんいるのだ。その中にまぎれてしまったら、きっと自分の事なんて見向きもされなくなってしまう……やがて、過去に関係のあった女の一人という事だけが鳴瀧の中に残ることになるかもしれない……
 鳴瀧がそんな薄情なことをするとは思えないが、どうしても悪い方へと思ってしまう。
「やっぱり、ちょっと弱気になっているのかな……」
 被っていた袿をずりあげ、もぐりこむ。
 明日は元気な顔で鳴瀧を出迎えて上げたいから、早く休んでおかないといけないというのにどうしても眠れず、一晩暗鬱とした思いで溜息をもらしながら、時が過ぎるのを待っていた。

























 鳴瀧が戻ってきたのはまだ、夜が明けきれない早朝のことである。だが、遠方へ出掛けていた主の帰りに、屋敷内は慌ただしさに包まれる。それでも、麻衣の不調があるため出来る限り静かにしていたが。
「まだ、麻衣の具合は悪いのか?」
 真っ先に麻衣が出迎えてこなかったため鳴瀧は、多恵に問いかける。
「お身体の方はだいぶ良いのですが、少し気鬱気味になっておられるようです」
 多恵の言葉に鳴瀧の眉がひそめられる。
 麻衣に気鬱とは似つかわしくない言葉だ。
 表情豊かで常に笑っているような麻衣からは、想像できない。また、バイタリティーに溢れ普通の姫・・・いや生半可な公達よりもよほど肝が据わり、行動力も溢れ、考えるよりも先に行動するような麻衣が、一人鬱々と考え込むとは鳴瀧とて思えない。
 だが、一度麻衣が沈み込むと根が深いことも知っている。
 めったにないことだが、あり得ないことではない。
 溜息をもらす鳴瀧に、多恵は麻衣が何を気に病んでいるのかを手っ取り早く伝える。
 おそらくあの様子では麻衣が鳴瀧に相談するとは思えない。
 もし意を決して口を開くときは、冗談ではなく本気で他に通った方がいいといいかねない。
 多恵から聞かされた言葉に、鳴瀧は呆れたように溜息をもらす。
 まさしく多恵が思ったとおり、何を考えているんだか…という言葉付きで。
 そのまま、多恵には何も言わず真っ直ぐに寝所へと向かう。
 その後ろ姿を見送りながら、きっとそのうちに可愛い赤ん坊を腕に抱ける日が来るに違いないと、一人ほくそ笑む。自分の出産と時期が離れすぎてしまい、乳母になることはできないかもしれないが、それでも麻衣が念願の赤子をその腕に抱けるのならば、乳母の役目は他の女に譲っても構わなかった。
 多恵は登ってきた朝日に祈るように手を合わせる。
 どうか女主の願いが叶うように。







 
「寝ていなかったのか」
 鳴瀧は奥の寝台へと近寄り腰を下ろすと、袿の中に潜り込んでいる麻衣に声をかける。
 眠っていないことは気配で分かった。
 麻衣は鳴瀧の声に、恐る恐るといった様子で袿から顔を覗かせた。
「もう、朝になったんだ……」
 のろのろと身体を起こす麻衣の表情は優れない。薄暗い中でも麻衣の顔色が悪いことが判る。鳴瀧は腕を伸ばし額に触れてみるが熱はないようだ、慣れた体温が冷えた鳴瀧の掌を温める。
 麻衣は着乱れた襟元を直して、鳴瀧に向かい合って座るのだが俯いてしまう。
 そんな麻衣を見つめながら鳴瀧は微かに溜息をもらす。
 どうやら、本気で気に病んでいるらしいと言うのは今の麻衣を見ればよく判るが、なぜ、そんなに気に病むのか鳴瀧には判らない。
 麻衣が聞けば怒るかもしれないが、子供など男女の睦み合いの付属品にしか過ぎないと鳴瀧は思っているからだ。出来ないと言うのならそれでも構わなかった。鳴瀧にとっては麻衣がいればそれで十分なのだから。
「そんなに子供が欲しいのか」
 突然の鳴瀧の言葉に、麻衣は弾けたように顔を上げる。
 その顔を見ればなぜ、鳴瀧が知っているのか驚いているのがよく判る。
「別に子供など出来なければそれでいいだろう。何か不都合があるのか?」
「だって…鳴瀧の子供産めなかったら……」
 口ごもる麻衣に鳴瀧は後を続けた。
「僕が余所へ通うようになるとでも?」
 その言葉に麻衣は身体を震わせる。ぎゅっと唇を噛みしめて鳴瀧から視線を逸らす。
「お前が身籠もらないからと言って、なぜ僕が余所に通う必要がある?」
「だって……」
「だってじゃない。
 僕は、麻衣を子供を産ませるための道具だとは思っていないつもりだが?
 出来なければそれでいい。お前が気に病むような事じゃない」
 それどころか、鳴瀧から見ればいない方がいい。
 子供など煩くて煩わしいだけにしか過ぎない。
 麻衣と共にいる時間も子供がいれば奪われてしまう。
 このまま二人で静かに時を過ごしていくほうこそ鳴瀧は望んでいる。だからこそ、鳴瀧はある時期を避けて麻衣を抱いていた。
 この、二人だけの時間を邪魔されないように。
 その事を麻衣は当然知らない。
 鳴瀧は麻衣の月の周期と、気の変化を読みとって、危険と思われる日を避けていたのだ。だから、この一年半共に過ごしていながらも麻衣は懐妊する気配を見せなかったのであるのだが……どうやら、鳴瀧の思惑は余りよい方へ働いては居ないようだ。
 鳴瀧にとってのどうでもいい存在は、麻衣にとっては重要らしい。その事に内心溜息が漏れる。
 今だ下を向いている麻衣の顔を上に向かせる。案の定その双眸には涙が浮かんでいた。
「何が不安だ」
「好きな人の――赤ちゃん、欲しいよぉ……」
 麻衣の言葉に苦笑を漏らすと、目尻に唇を寄せ浮かび上がる涙をすくい、微かに震えている身体を抱き寄せる。
「別にお前には身体的な異常はない。
 頃合いがくれば、いやでも身籠もる時が来る」
 鳴瀧の確信的な言葉に、麻衣は瞬きを繰り返す。
 なぜ、そんなにハッキリと断定できるのだろう。
「なんで鳴瀧には判るの?」
 素直に聞いてくる麻衣に、鳴瀧は笑みを浮かべるだけで答えてはくれなかった。
 ただ、麻衣に耳元に唇を寄せ別の言葉を告げる。
「その時までは、静かな時間を二人で過ごすのも良いだろう?」
「二人で?」
 上目遣いで問いかけてくる麻衣に、鳴瀧は苦笑を浮かべる。
 涙目で上目遣いに見上げてくる麻衣は、例え惚れた欲目であるといわれても可愛いと思ったのだ。
「そう、二人で。不満か?」
 フルフルと麻衣は頭を振る。
「鳴瀧が居てくれたら、平気――」
 ぎゅっと麻衣も腕を伸ばして鳴瀧にすがりつくように抱きついてくる。
 久しぶりに抱きしめる感触に、鳴瀧はこのまま麻衣を抱きたいという衝動に駆られる。確か時期的にそろそろ危険な頃合いなのだが……まぁ、それも又運命なのだろう。
 鳴瀧は素直に自分の衝動に従い、麻衣をゆっくりと寝台の上に押したす。
 急に押し倒された麻衣は、驚いたように目を見開いていたのだが、柔らかな笑みを浮かべると鳴瀧の首に細い腕を絡め、引き寄せる。








 いつの日か、この身に宿りますように――










 祈るように呟かれた言葉は鳴瀧の口腔深くに消え、音となることはなかった。

















☆☆☆ 天華の戯言 ☆☆☆
うーん・・・これ、やっぱりUPしたことあるのかなぁ?
ないのかなぁ?
読み直しても・・・書いた記憶はあるんだけれど、サイトにUPしたんだかしてないんだかがさーっぱり判らない(笑)
でも、htmlデーターでは残ってないから、たぶん未掲載だと思われます。
なにせ、これ書いたといきまだ鳴瀧がナル表記なんだ(笑)
どんだけ前に書いた話だよ・・・と思ってしまった今日この頃。
そういえば、古いデーターでまだ再UPしてないのがいくつかでてきたなぁ。
それも、ちょっくらいじくってチマチマサイトに掲載していこうと思います。




久方ぶり過ぎる平安草紙楽しんでいただけたら幸いです♪♪




 




2009/10/17
Sincerely yours,Tenca