燃え尽きぬ恋



 朝食が終わった頃、リンのみが夕べのカメラチェックをするためにベースに残ったが、残りはあの謎の痕がどうなっているかを確認しに、外へと出る。痕を間違っても消さないように気を付けながら、あとをたどっていく。
 その痕はやはり麻衣の想像通り、鐘に残っていた痕と形は一致した。幅は同じ23センチ、鐘には鱗のような模様の痕もあったが、砂利に覆われた場所では鱗模様は見つからなかった点を覗けば、ほぼ同一と考えても良いだろう。
 デジカメに取り、機会で分析すれば同一の物かどうかはすぐに分かる。今頃リンがその分析をしているはずだった。
「何の痕でっしゃろうか?」
 荷物を引きずったにしては小さすぎる。丸太などを引きずったとも言えなくはないが、真っ直ぐに進めばいい物を蛇行線を描くのも妙だ。ジョンは青い瞳をきょときょととしながらそれを目で追う。
「麻衣、あんたが見たのってまさか蛇とは言わないわよね?」
 綾子が柳眉をしかめながら問いかける。
 大蛇が這って進んだと言えるような痕なのだ。
「黒い影にしか見えなかったんだもん…蛇かどうかなんて判らないよ」
 判らないが蛇に見えなくもない物だった。だが、こんな太さを持つ蛇が例え山に囲まれた地とはいえ、こんな所にいるのだろうか?それに、まだ冬とは言い切れないがかなり寒さは厳しい。山に囲まれているこの地ではもう冬と言ってもいいかもしれないぐらいだ。冬眠をする蛇がこれからますます寒さが厳しくなると言う時期に、冬眠もせずのほほんと地上を彷徨っているのだろうか?
「冬眠する前の腹ごしらえだったりしてな」
 すなわち人間で脂肪を蓄えようと言うことなのだろうか?
 妙な沈黙が辺りに漂う。
 冗談のつもりで言ったのだろうが、現実的に大蛇が自分達の傍にいるかもしれないとなると、呑気に構えては居られない。危険があるにしろないにしろ、自分達が知らないうちに辺りをはいずり回られていると思うだけで、うすらざむい。
「ここで途絶えている」
 先を歩いていた麻衣が歩みを止める。それは、唐突に痕が消えていた。いや、向きを変えていると言うべきだろうか。360度寺を囲むように残っていた痕は、途中で気が変わったかのように90度曲がっている。そちらの方に視線を向けてみれば、やはり問題の鐘の方に続いていた。
「結局は、あの鐘に行き着くんだな」
 麻衣達は、寺の四隅にカメラとモニターなどを設置し、万が一またその影のような物が現れても録画できるようにしておく。
 鐘の方のカメラを再生などして調べてみたが、特に怪しいものは写っていなかった。
「原さん、撮影時はどんな風に進められていったのか、もう一度細かく教えて下さい」
 反応らしい反応といえば、麻衣が見る夢ぐらいのため、ナルはもう一度原点に戻るべく真砂子に話すよう促した。
 撮影は、あの鐘でよく心霊写真が撮れると言うことから、撮影が始まったのだ。きっかけは、番組の投稿された一枚の写真で、一枚目の鐘は普通なのに二枚目は、とぐろがまいているかのような影が映っていたのが選ばれたきっかけだ。
 朝早く東京を出発し、夕方にはこの地に着いていた。暗くなるまで待機し、夕闇が迫ったときに撮影が開始された。
「怨恨に満ちた声が聞こえましたの。
 誰を呪っているのかは判りませんが、自分を騙した男の方を酷く恨んでおります。どういった経緯で、そこまで恨みを抱いてしまったのか、お話を聞こうにもその方はひたすら恨みの念を放つばかりで、お話にはなりませんでした。
 あたくしは、しばらく語りかけたのですが反応がなくて、スタッフの方達にその事を告げようとしたとき、足首を蛇に咬まれたのですわ。小指ぐらいの太さで長さも15センチあるかないかというぐらいの、随分小さな蛇でしたわ。
 あたくしが、蛇に咬まれてしまったと言うことと、反応が期待できるほど無かったと言うことで、その時は撮影が上がりましたんですけれど、翌朝起きたら鱗のような痕がうっすらと浮かび上がってきて、日に日に濃くなっていきましたの。
 それから、ふいに力が抜けると彼女の恨みがましい声が聞こえるようになって、あたくしの力では抑えることは出来ても、身体から追い出すことも、浄霊する事も無理だと思いましたので、力を貸していただこうと思いましたの」
「この地で何が起きたのか判りますか?」
「いえ…判りませんわ」
 どうやら、安原の調査結果待ちになりそうだ。
 鱗のような痣も消えるかと思いきや、変わることなく白い肌に浮かび上がっている。
「早く消えるといいよね」
 女の子の肌にこんな痕が残るのは悲しすぎる。
 いくら、仕事的にトラブルが付き物で、霊障などによっては一生物の傷が残るとはいえ、こんな鱗のようなものは悲しすぎる。
 麻衣達が外を調査している間に、ナルはここの住職を兼ねている尼僧に話を聞いたのだが、彼女達もただここを預かって管理しているだけにしか過ぎず、寺のいわれなどは知らないという話だった。
 物置に管理している文献を数冊持ってきてくれたのだが、歴史が古いという割にはその冊数は恐ろしいほど少ない。というのも、過去この寺は三度ほど全焼し、そのたびに歴史を記した書物などは灰と化してしまったため、現在残っている史書はここ百年分ほどしか残っていないという話だった。
「ぼーさん読めるか?」
 古い今にも破れてしまいそうな和綴じの本を滝川に手渡す。以前に比べればナルも多少は漢字なども読めるようになったが、百年も前の文体まして毛筆体には全く歯が立たない。リンも漢字ばかりは読めるが、文章の意味を正しく判読することは出来ない。いつもならば、安原の担当なのだが、彼はまだ戻ってきていないのだ。
「う〜〜〜ん」
 ぱらり…ぱらり…ページをめくって文字をおう。墨で書かれているせいか掠れてはいても消えてはいないため、読めなくはない。
「読めるには読めるが、当時の住職の日記だな。こりゃ、へぇ、当時もここは尼僧が管理していたのか…日付は、1868年…明治元年ていえば、神仏判然の令を政府が出した年じゃないか?」
 滝川はそうだよな?と問いかけるがあいにくとそれに応えてくれる人物はいなかった。生きた字引と言われる安原なら、それにまつわることをすらすらと応えてくれたはずである。が、あいにくと安原はこの場所にはおらず、麻衣や真砂子も判らない。
 判らないのも仕方ないことだ。麻衣は日本史は選択しておらず、最後にやったのは中学生時代まで遡らなければならない。真砂子は真砂子で仕事が忙しく、大学には進まなかったのだから。
 その後もぱらぱらと丁寧にページをめくっていたが、滝川は軽く首を振る。どうやら、めぼしい記述は何も残っていないようだ。
「だめだ、ナル坊手がかりになることは何もなさそうだ。
 今から約百数十年ほど前に日本は神仏判然という令が政府から下されて、仏教が廃止された時期があったんだ。その時に仏教に関わるありとあらゆる物が、処分された。この寺も同じだ。当時、寺を管理をしていた尼僧が、その時のことを綴っている日記だな」
「ここは代々尼僧が管理していたのか?」
 ナルの問いに滝川は判らないと答える。
「まぁ、今も尼僧、百年前も尼僧となるとここは尼寺だったのかもしれんな…ん?」
 流し読みをしていた滝川の手が止まる。何か気になる文章を見つけたようだ。
「この寺に僧侶を入れるべからずって、書いてあるな。なんでだ?」
 理由を探ろうと他の和綴じ本も開いて丁寧に、読み漏らしのないように文字を追っていくが、肝心の理由が書いてはいなかった。
 普通、尼寺は男子禁制と言う意味合いが強い。わざわざ記述を書かなくても、僧侶が尼寺へ行くはずがない。それなのに、あえて書いてあるというのはおかしい。
「ねぇ、その僧侶を寺に入れるべからずって当時だけかしら?」
 綾子がふと、滝川を指さす。
「山を下りているとはいえ、あんたも一応ぼーずなんでしょ?」
 その言葉に皆の視線が滝川に集まる。
 つい、その外見から失念しがちだが、滝川は密教僧であり、下山中のみとはいえ坊主には変わりはない。
「そういえば…そうなるな…」
 本人もつい失念してしまったというのだろうか。
 何とも言えない沈黙が辺りを包み込む。
 あえて、僧侶の立ち入りを禁ずるという言葉があるのだから、ここは元々は尼僧寺ではなかったのだろう。考えてみれば尼僧寺ならここに、男性が入れるわけがなかった。だが、特別禁止されていることもなく、自由に男女関係なく入れる。ということは男そのものを禁止しているのではないのだろう。では、なぜ『僧侶』という限定付きなのか。
 念入りに滝川は全ての本に目を通すのだが、残念ながらその事に対する記述を見つけることはできなかった。
 引きずった何かの後を見つけられるどころか、より謎を作ってしまっただけに終わった。
「ねぇ、ぼーさんさ。めずらしくすごく霊感みたいのが発揮されているよね?
 それってさ、霊感じゃなくて第六感何じゃないの?ここにいたら危険という」
 そう言う危険を感知するのに一番敏感なのは麻衣だった。だが、今回はどうも滝川もそのような気配を常に感じている様子だったことを麻衣は指摘する。それは、滝川の僧侶としての力が、この寺の危険を察知しているのではないだろうか。
「さすが似たもの親子。野生児の親はやっぱり野生児だったのね」
 綾子の言葉に麻衣はぶすぅ〜〜〜と頬を膨らませる。どこの世界に野生児と呼ばれて喜ぶ女性がいるだろうか。反論しようとする麻衣を真砂子がクスクスと笑って宥めているんだか、貶しているだか判らないことを口にする。
「麻衣は野生児なのではなくて、野生の動物並に直感が良いと言うだけですわ。いいことじゃありません? それだけ危険から逃れやすいんですもの。でも、麻衣の場合は逃れやすいと言うより、自ら飛び出していってしまうときの方が多いかもしれませんけれど」
 やはり素直に喜べない誉め方のようなきがする。
「ぼーさん、身の危険を感じるか?」
 ナルに問われ滝川は難しい顔をする。漠然と嫌な感じはするのだが、だからといって危険かと言われるとそうとも言えるし、そうとも言えないという何とも曖昧なモノだった。
「ぼーさんどうする。このまま協力して貰っても、降りても構わないが?」
 危険が在ることを無視できない以上、ナルは万が一のことを考えて滝川に調査に参加し続けるかどうかを尋ねる。滝川がいることで顕著な反応がで、有意義な現象が記録できるかもしれないが、同時にそれはかなり危険を産むかもしれない。調査員ではなく助っ人の滝川には、無理強いは出来ないのだからナルは尋ねる。
「いや…まぁ、まだ憶測の段階だ。
 もし、万が一被害が拡大するようなら俺は一度ここから離れる。皆も巻き込むわけにはいかんからなぁ。できれば、そんな事態は来ないでもらいたいがね」
 滝川の応えにナルは軽く頷き返すと、麻衣と真砂子の方に向かって何か変わった様子はあるかどうかを尋ねる。
 麻衣の夢を裏付けるような蛇らしきモノが出たというのは、この古い文献では見あたらない。また、過去何かしら事件のようなモノがあったというのも、見つけることはできなかった。真砂子もあいかわらずハッキリとしたモノは視えないという。
 この地自体が長い間、この念に晒され続けているのか、どうもこの女性の念らしきものとこの地が一体化しつつあるような感じだというのだ。
「それって、土地神になりつつあるのか?それとも、この場合は祟り神か…いや、鐘についているんだから九十九神か?」
 どれにしろ万が一これがただの霊ではなく、神だとしたらやっかい極まりないことになる。以前のおこぶ様事件の再来にならないとも限らない。
 何とも言えない沈黙が当たりに漂うが、このままここにいても何もならないため、皆が皆自分達に出来ることをするべく解散する。




「ぼーさんはさ、あまり鐘に近寄らない方がいいんじゃないの?」
 鐘を録画していたビデオテープを取り替えるためと、湿度や温度を計りに行くため、鐘の方に向かうと滝川が後から付いてくるので、麻衣は振り返りながら問いかける。
「麻衣一人で行かせるわけにはいかんでしょ。それにこれで、少しは反応出てくれれば逆に進展が出ていいんじゃないの?」
 鐘を嫌がっている割には、呑気な発言に麻衣は苦笑を漏らす。変に緊迫感に包まれているより、ちょっとのどかな雰囲気の方がリラックスできて麻衣的にはいい。ナルに言わせれば、危機感を感じずに危険に近づくことはバカのすることだと言われるかもしれないが。
「なんかさ…お日様出ているのに、ここだけ暗い感じだよね…」
 空には雲一つなく太陽が柔らかな日差しを地上に注いでくれている。空気はシンと冷えきり冷たいのだが、それでも太陽の下を歩いているとじんとした温もりに包まれるのだが、この鐘周囲に関しては、幾ら日が照っていても変わりがないようだ。どうも底冷えする寒さが伝わってくる。
「確か、昨日は他より2度ほど低かったな」
「うん」
 二度という数字を聞くとそれほど大差はないように感じるかもしれないが、同じ条件の下で計測していての2度の差は大きすぎる方だろう。
 鐘に近づくと滝川は鐘を挟むようにして置いてある、二台の追尾カメラのテープを入れ替える。その間に麻衣は湿度と温度をデジタル温度計で測る。
 しばらく待っているのだが、麻衣は思わずその数字を見てナルではないがおもわず感嘆の声を上げてしまう。それほどまでに、勢いよくぐんぐん温度が下がっているのだ。周りは七度ほどあるのだが、今はすでにマイナス三度まで下がっている。
「…ぼーさん…下がっている…すごい……まだ下がるよ」
 デジタル温度計が示すとおり、冷たい空気が辺りを包み込む。急激な気温の低下により、大気中の水分が氷結しているのだろうか。辺り一面うっすらと薄靄がかかり視界が悪くなっていく。そればかりではなく、何とも表現しがたい臭気が辺りに漂い初め、吐き気すらこみ上げてくる。
 何の臭いか判断付かないところだが、タンパク質が焦げたようなきな臭い臭いにも思える。
「麻衣…下がれ」
 滝川は懐から独鈷杵を取り出すと身構えながら、ジリジリと鐘から離れていく。視界が悪いというのはそれだけ危険に反応する速度が遅くなってしまう。充分距離を取って置かねば、対応しきれない可能性もあるのだ。
 空気が一瞬だけ密度をまし、鐘の背後の風景が揺らいだと思うとそれは一気に凝縮した。
「…っひ」
 麻衣は悲鳴を漏らしかけるが下手に声を上げて、霊を刺激するのは危険だという本能が働き、とっさに両手で口を押さえる。
 それは、ゆっくりと姿を現せた。
 長い…長い…身の丈を覆うほど長い髪が、辺りに広がっている。蒼白い顔は死者だからだろうか。その表情は長い髪に覆われて判らないはずだというのに、恨めしげな黒い瞳が睨み付けるようにこちらを見たのが判る。
 目をそらしたいのに、そらせられない。
 酷く、非現実的なその光景に、半ば脳が現実を処理することを拒否してしまいそうになる。もしも、他の人間がこれを見たのならば、自分は気が触れてしまったか、テレビ局に騙されているかと思うかもしれない。
 だが、これは現実だということを麻衣は知っている。
 麻衣を背中で庇うように動いた滝川は、相手から目を離さない。滝川は驚いたのは一瞬だが、既に体になじんでいる動きを無意識のうちにかたどる。カメラの電源はテープを取り替えるためにオフにしたままだ。まだオンにしていない。その為ベースには今の事態が伝わっていないはずだ。
 オンにされないことを不審に思って、誰かしらが様子を見に来るのに少なくとも五分ぐらいは掛かるはずである。
 ずる…それは、鈍い音を響かせながら動いた。

「――様…何故、出来ぬ約束を口にされたのじゃ」

 低い…低い…嗄れた声が空気を震わせる。
 いや、音として聞こえるものではなかった。耳が拾った音は、空気が抜けるような音だけ。いや、口からは空気が漏れるような音だが、その青白い喉はぱっくりと割れ、腐った傷口からどろどろと膿のような物が吹き出していた。ごぼ・・・ごぼ・・・と、泡がつぶれるような音しか聞こえないというのに、彼女が漏らした音を言葉として理解できた。
 直に脳に日々くその声に、麻衣は恐怖を隠しきれない。
 体が小刻みに震え、たっているのがやっと出ある。滝川の背中越しに彼女を凝視したまま身動き一つとれないでいた。
 彼女は長い身体をうねらせながら、ゆっくりと近づいてくる。
 滝川はにらみつけるように彼女を凝視していたが、指を素早くくんで口早に言葉を紡いでいく。
「タリツ・タボリツ・パラボリツ・シャヤンメイ・タララサンタン・ラエンビ・ソワカ」
 素早く真言を唱えると印を切り、鋭い気合いの元独鈷杵を地面に突き刺す。
 その瞬間その女は何か目に見えないモノに弾かれて、甲高い声を上げると、鐘の中へと溶け込むように消えた。
 靄が消え辺りが元の温度を取り戻すと、麻衣は気が抜けたようにへなへなと地面に座り込む。実際に腰が抜けているかもしれない。いままでに色々な体験をこれでも積んできたつもりだが、さすがにあれには恐怖を隠しきれない。
 いや、恐怖と言うよりも生理的嫌悪に近いかもしれない。
「じょーちゃん、大丈夫か?」
 肩から力を抜くように吐息を掃くと、背後を振り返って滝川もしゃがみ込み座り込んでしまっている、麻衣と視線を合わせる。
「へーき。ぼーさん怪我ない?」
「安心して良いぞ。無傷だ」
 ポンポンッと宥めるように麻衣の頭を撫でると、麻衣は漸く強ばった顔に笑顔を浮かべた。
 静けさを取り戻した鐘の方を見ると、何かがはいずったような後が砂利の上に残っている。麻衣は先ほどの光景を思いだしすぐに視線をずらそうとしたが、何かが光ったのでそちらにもう一度視線を向ける。
 やはり何かが陽光を煌めかせている。
 麻衣は立ち上がって恐る恐るそれを手に取ると、青緑の不透明の鱗だった。
「ぼーさん、これあの人…人でいいんだよね?…あの人のかな?」
 思わず確認してしまった麻衣に落ち度はない。
 なぜならば、麻衣達が目撃した姿は胸から上は女性体だったが、その下が太く長い蛇の胴だったからに他ならない。
 女性の胴回りほどのある太く長い青緑の鱗がびっしりと生えた胴をうねらせながら、彼女はこちらを恨みがましい目で睨み付けていた。夢に出てきそうな程、恨みに濁った目だ。
「まぁ…匹で数えるより人で数えた方が、いいだろうなぁ…」
 どこか呑気とも言えるような言葉をやりとりするのは、今だ非現実的で現実感を帯びていないと言うことと、どこかまだ現実逃避をしたいからかもしれない…
「地べたに座り込んで何しているのよ。それよりぼーず、カメラの電源入ってないってナルがおかんむりよ。さっさとスィッチ入れなさいよ」
 綾子のそんな言葉に二人は顔を見合わせると、ふぅ…と溜息をついてしまう。いつも聴いている声を聴いて、漸く現実の時間が動き出したようなきがした。
 二人はよろよろと立ち上がって、今までのことを報告するべく寺へと足を向ける。カメラの電源…入っていなかったために、今の現象は記録できていない……何てタイミングで出てきてくれたんだろうか。あと、ほんの数秒遅かったら少なくともこの後の恐怖はなかったのに…二人が同時に思ったことだった。










☆☆☆ 天華の戯言 ☆☆☆
 今回は、ぼーさんと麻衣が主役(笑)めずらしく、ボーさん活躍中です。
 はたしていつまで活躍してくれるんでしょうか?
 そして、蛇女の登場(笑)私的にはこの蛇女の胴の直径は30センチぐらいを想像しています。全長は5メートルぐらい。ソレよりも長い髪に覆われた、血色の悪い薄気味悪い女性です。
 ええ、道ばたでばったりと会いたくないですね。今回陰の主役は蛇さん達ですv
 

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