第三話


              

      


 深夜。彼女は急いで自宅へと向かっていた。最近この辺りでは、動物が惨たらしい姿で殺されるという事件が続いている。人間が安全だという保証もなく、また、そんな死骸の第一発見者になるのもごめんだ。
 早く、安全な我が家に帰りたく自然と、歩みは早くなる。
 人気のない通りにリズム良く、ヒールの音が響くが、彼女はその歩みを急に止めた。背後が気になって振り返る。
 別に人が立っている様子はなかったが、何故か背後というか周辺の空気がおかしい。辺りを見渡して、公園に目がいったとき思いつく。虫が全く鳴いてないことに。夏の夜がこんなに静かなわけがない。まして、ここの公園には池もあり、木々も生い茂っている。この季節うるさいぐらいに、虫の鳴き声が鳴り響いている。
 彼女は走ろうと思った。ヒールを脱いで裸足で。だが、その腕が誰かに引っ張られる。逃れることが出来ないその強さに、目を見開く。
 声を出さなければ。
 そう思うのに、喉がひきつって声が出ない。
「いや・・・い・・・やぁ・・・」
 公園に引きずり込まれる。
 恐怖に顔が歪み、大声を出そうとした瞬間銀の煌めきが横切る。
 何が横切ったのか? 確認できないうちに、赤い液体が噴水の如く噴き出す。
 彼女の首が真一文字に切り裂かれ、頸動脈から血があふれ出しているのだ。
 痛いと思う前に、熱いと思い。耳障りな音が聞こえる。何かを舐めるような音? 舐めるというよりすすると言った方が近いかもしれない。その音源を確認する前に意識が霞み、その頃には何も感じなくなっていた。ただ、何故か頭部が引っ張られひきつるような感じがしたのだが、もう彼女にはそれがどうしてか、わからなかった。
 ただ、むせ返るようなきつい匂いと、視界を埋め尽くさんばかりの赤い花が咲き乱れている。その花を理解したとき、彼女の視界は一気に暗転した。




 祈るような声が常に闇に響いていた。

 
――足りない……


 嗄れた声が呟く。
 男か女か判別できない掠れた声。年齢すら判別することはその声からでは出来ない。
 その声は何かを捜していた。必死になって何かを捜している。欠けてしまった物を見つけるために。何かを補わなければいけない。それがなければ崩れてしまう。壊れてしまう。その思いに捕らわれ、動き回る。

 

―――では、無くなってしまう。



 悲鳴のような、切なる声。
 そして、しばらくの沈黙が戻る。
 が、それはつかの間の沈黙にしか過ぎなかった。やがて声の変わりに響く音。
 何かを引きずるような音とがしたかと思うと、水が滴る音に変わる。生理的な嫌悪を覚えるような音が、静かな夏の夜に響く。
 辺りを覆う異様な空気に怯えるように、犬の鳴き声はおろか虫の鳴き声すら聞こえない。
 やがて、全ての音が絶える。
 完全に静寂がその地を覆った頃、気配はふつり…と途絶える。
 やがて、今までの異様な気配など無かったように、いや払拭するかのように虫たちが一斉に鳴き出す。止まぬことを知らぬように。喧噪とした時間が戻る。








「あら、麻衣起きていたの? あんた、小さな子供みたいに話し疲れて眠っちゃったらしいわね。あたし達もとっくに休んじゃっていたから、眠りこけたあんたを連れて来れなくてここに運んだって言っていたけれど、先それを聞いた破戒僧は朝っぱらから大騒ぎよ。騒ぎこっちまで聞こえなかった?って言うよりよ〜〜〜く眠っていたみたいね。昨日のことちゃんと覚えている?」
 布団の上に上体を起こして座っていた麻衣を見つけて綾子が声をかける。どこか楽しげな声だ。このことをネタにからかうつもりでいたのだろう。だが麻衣は寝起きのせいなのかぼーっと真っ直ぐ前を見ていて、綾子の呼びかけにすぐ答えない。
「起こしても起きないから放っておいたっていっていたけれど、起きたのなら早くご飯食べちゃいなさい。午前中には出たいってナルが言ってたわよ。麻衣?」
 てきぱきとおかーさんよろしく綾子が声をかけるが、麻衣は反応を返さない。虚ろな眼差しで虚空を呆然と見ている。
 寝ぼけているように見えるが、どちらかというと放心状態に近いような様子だ。不審に思った綾子が麻衣の顔をのぞき込むと、漸く麻衣の眼の焦点が合い綾子をみるが、綾子を認識すると同時に麻衣は口を両手で押さえ込み、顔を逸らす。
「麻衣!?」
 うっすらと汗を掻き、涙をにじませて麻衣は込み上げてくるものを必死に堪えていた。いつもと違う麻衣の様子に綾子は驚きを隠せない。
「ちょっと我慢しなさい」
 綾子はそれだけ言い残すと、慌てて立ち上がると洗面器があるであろう風呂場へと足を向けた。
「麻衣――具合悪い?」
 背中を優しくさすりながら、麻衣に問いかけるが麻衣は力無く首を振る。
 なぜ、いきなり嘔吐しだしたのか…昨日までは具合が悪そうな素振りはなかった。昨日の影響だろうか。心理的負担があとから来ると言うこともあるのだ。まして、麻衣が見た映像ならば精神的負担となって影響を与えてもおかしくはない。ぐったりと、再び布団の上に横になった麻衣の額に触れてみるが、特にこれと言って熱もなさそうだ。微熱と思えるほど体温も高くなさそうである。
「昨日見たもののせい?」
 思い当たる限り綾子は問いかけるが、麻衣は力無く首を振って全てを否定する。何か言いかけるがまだ口を平口からはないようだ。弱々しく唇を動かすだけである。目眩もひどいのか、片手で目を覆ってじっとりとした汗を掻いている。
 具合が悪くないわけがない。今の麻衣を見れば百人が百人とも具合が悪いと言うに決まっている。やせ我慢だろうか?麻衣なら、無闇に人に心配欠けたくなくて我慢はするだろうが、ここまで来てしまえば隠しようがない。そうなった場合は余計な負担をかけないためにも、麻衣は自分の状態を出来る限り相手に伝え、心配書けまいとするのだが、それすらもしない。ただ、億劫そうに臥せている。
「麻衣、具合が悪くないのなら―――」
 気怠そうで、口を開くのも億劫そうな麻衣は何も言わない。ふと夕べの滝川との会話が甦る。突拍子もないようなきはするのだが、一度気になるとしょうがない。綾子は麻衣を見下ろしながら、意を決して問いかける。この場には自分と麻衣しかいないのだ。遠慮する必要もないだろう。
「ねぇ…麻衣、あんたナルとはどういう付き合い方しているの?」
 なぜ今綾子がそんなことを聞いてくるのか、判らなくて麻衣は掠れる声で問いかける。
「な…んで?」
 いつもの陽気な声とは別人のように、枯れた弱々しい声音。
「言いにくいことかもしれないけれど、ズバリと聞くわ。
 あんた、妊娠しているんじゃないんでしょうね?」
 本当に綾子は単刀直入にズバリと聞いてくれた。
 一瞬意味が通じなかったのか麻衣はぱちくりと何度か瞬きした後、その言葉に真っ赤になる。顔はおろか耳や首まで真っ赤になって、綾子から視線を逸らしそわそわとし出す。
「まさか―――」
 ナルと麻衣がただならぬ仲になっているのではないか?と予想をつけていたとはいえ、麻衣の反応に確信を抱く綾子。そして、麻衣の慌てている様子に一気に確信に近い物に変わっていく。
 だが、綾子の確信は半分は当たっていたが、半分は見事に外れていた。
「ち、違うよ…だって、先週終わっているもん――――」
 か細い声で答えた麻衣は首まで真っ赤だ。
 先週終わっていると言うことは、妊娠はあり得ない。それはすぐに綾子も判ったが…麻衣が否定したことは『妊娠』に関する疑惑だけであって…それに至る行為そのものを否定しているとは思いがたい。
 そのことに関して追求をしたいと思ったが、とりあえずそれは後回しだろうと綾子は必死でなだめた。今はとりあえず麻衣の容態の方をハッキリとさせねばならないだろう。
「なら、どうしたのよ。妊娠でも具合が悪いわけでもないんなら……」
「夢を…見たの」
「夢?」
 今まで麻衣は色々な夢を見ている。それこそおぞましい物から悲しい物まで。だが、今までこのような反応を起こしたことがあっただろうか?
 麻衣は首を傾げいぶかしんでいる綾子にかいつまんで話す。
 自分が見たおぞましい限りの夢。
 綾子は麻衣の夢の話を聞いて、血の気が引く思いがした。いや、もしかしたら本当に音を立てて血が下がっていっているのかもしれない。
「麻衣―――その夢」
「綾子?」
 麻衣は不思議そうに綾子を見上げる。
 血の気を無くし綾子は顔面蒼白になっていた。
 何かを言おうとしているのか、唇を舐めて湿らせているが、まるで言葉を忘れてしまったかのように綾子は口を開かない。
「いつまで寝ているつもりですの?」
 ふすまをカラリ…と開けて真砂子が姿を現したが、綾子と麻衣は身体を同時に震わす。
「どうなさいましたの? あら…麻衣、お身体の加減でも悪いんですの?」
 麻衣の枕元にある洗面器を見つけた真砂子が問いかける。
 何かを嘔吐したのだろう。洗面器の中にはティッシュが何枚も入って中身を隠していた。
「真砂子――ナルを呼んできて頂戴」
「? ナルをですか? 判りましたわ」
 真砂子は特に疑問を投げかけることなく、そのままふすまを静かに閉めてナル達の元へと足を向ける。おそらく麻衣の具合が悪いから出発を遅らせたいとか、見合わせた方がいいだろうと言う相談でもするのだろう。
 そう思って疑わず、ナルを呼びかけるときも麻衣の具合が悪いようだと伝えた。
 その言葉に滝川がすぐに反応し、医者だ!!と騒ぐが、ナルは落ち着いたもので、寝不足が原因だろうと無情なことを平然と述べながらも、真砂子に言われるがままに麻衣達の部屋へと足を運んだのは言うまでもない。
 麻衣の部屋を訪れたナルが受けた話とは、真砂子が想像していた物ではなく、麻衣の夢の話で、その話を聞いたナルの柳眉は皺を寄せていた。
「何? どうかしたの?」
 無表情な顔のままのナルと、難しい顔をした綾子を交互に見る。
「今朝、この村で女性の他殺体が見つかった」
「ナル!」
 綾子が止めようとするが、ナルは隠していてもしょうがないとばかりに新聞とニュースを騒然としている話題に触れた。おそらくこの小さな村だけではなく、日本中を騒がせているだろう話題だ。今ナルが言わなかったとしてもすぐに麻衣の耳に入るに違いない。なら、下手に隠してもしょうがないという物だ。
 猟奇殺人…というのが的確であろう、異質な状況の死体だ。
 髪をむしり取られ、喉を掻ききられ血を吸い取られて無惨な姿に変わり果てた遺体が、公園の隅から早朝に犬の散歩をしていた老人に見つけられたと、今朝から報道されている。
 その話を聞いた麻衣は、がたがたと震え出す。
「麻衣」
「あ…私…私なの」
 震え舌が上手く回らないのか、ナルのYシャツを手の色が白くなるほど握りしめ身体を震わせながら、すがるような視線をナルに向け麻衣は告げる。
「夢の中では、私が――私が―――――――ぐぅ……」
 その光景を思い出したのか、麻衣が慌てて口を押さえ綾子が洗面器を麻衣に渡す。もう吐き出す物は何もないのか、黄色い胃液が少しだけ出ただけで、何もでない。それでも胃は何かを吐き出そうとするかのように伸縮運動を繰り返す。
 苦しげに涙を浮かべ、肩で荒くする麻衣をナルに任せると水を貰いに綾子は場を離れる。
「麻衣、犯行時刻は深夜2時から4時の間と言われている。その間この旅館から出入りした者はいない」
「でも――っ」
 この手で、この手で確かに……
 震える麻衣の身体をナルが抱き寄せる。
 華奢な身体はすっぽりとナルの腕の中に納まってしまう。こんな細い身体であのような暴挙がそうそうに出来るわけがない。女性とて必死に抵抗しているはずだ。
「落ち着け」
 麻衣の耳元に唇を寄せ低く囁く。
 髪に指を絡め優しく好きながら、震える麻衣の身体を優しく、包み込むように抱きしめる。麻衣が落ち着き不安が無くなるまで何度も繰り返す。
「夢だ。麻衣は昨夜話疲れて眠るまでは、僕たちといた」
 ナルとリンに好きなだけしゃべると、麻衣は疲れたのか意識を失うように眠りについた。あまりの寝付きの良さにナルは呆れ、リンが苦笑を漏らしたほどだ。ナルの肩に頭を預けスヤスヤと寝息を立てている麻衣を見てリンは「貴方にそんなことが出来る女性は谷山さんぐらいでしょう」と、彼にしては珍しいことを言い残して、後をナルに任せると言い残すと彼も、休むべくベースを後にしたのだった。
 麻衣はナルに全てを預けるように静かな眠りについている。起こさないように――おそらくちょっとやそっとでは起きないだろうが――麻衣の身体を抱き上げると、麻衣達の寝室へと運ぶべく足を運んだ。綾子も真砂子もとうに寝静まっていたためナルは仕方なく、自分のために用意されていた布団を麻衣に明け渡し、ナルはそのまま調査データーをまとめていた。そのまま夜を明かしているのだ。その間麻衣は呑気に眠っていたし、一度も目を覚ますこともなかった。もちろん夢遊病者のように眠ったまま起き出すと言うこともない。麻衣が言うようなことがあるわけはないのだ。
 それに、気になる点がもう一つあった。
 ナル達がこの村へ来る少し前から、近隣で動物たちが殺されると言う事件が多発していたらしい。小学校で飼われている動物から、近隣で代われている犬や、野良猫などが一応に首を裂かれて血を抜き取られて死んでいるのを何件も発見されているらしく、ニュースなどでは今回の殺人事件は、動物猟期殺害事件がエスカレートして人間にまで伸びたか、もしくは模倣犯という可能性もなくはないと報道していた。
 女性に何らかの恨みを持つ物が、動物猟期殺害事件の犯人に罪をなすりつけるために模倣した可能性もあると。ナルはそれらを麻衣に語り麻衣ではあり得ないと言い聞かす。
「そもそも麻衣、お前はそんなことをする理由があるのか?」
 ナルの胸に顔を寄せながら聞いていた麻衣は、フルフルと力無く首を振る。淡々とした抑揚の欠けた声。優しくもなければ心配しているとも思えない。感情が全く伺えない声音だというのに、落ち着いていくのが判る。
 得体の知れない恐怖から、徐々に解放されていくとともに、今まで抑えてきた物が込み上げる。恐怖とは別の意味で身体が小刻みに震える。
「怖かったの。まるで自分がやっているみたいで……怖かった・・・・よく判らないけれど、怖くて怖くて・・・・・・」
 ポロポロと涙をこぼしながら呟く。
 あの夢はいつものように、夢という自覚がなかった。今までは意識のどこかで夢だと言うことが判っている。例えシンクロしていても『過去にあった出来事』として遠い意識で認識していた。なのに、今回の夢はそれが全くなかったのだ。今思い出しても夢というより自分がやったことを思い出しているように思える。こんな事はいままでなかった。
 リアルで、あまりにもリアルすぎて、まるで自分で行っているかのようだった。目が覚めて布団の中で眠っていたと言うことに気が付いても、どうして自分がここで眠っているのか判らなかったぐらいだ。その時の意識は完全に公園にあって、公園にいるはずなのに……そう思ったぐらいだ。だから、目の前に綾子がいて声をかけられてもすぐに自分に声をかけられているとは思えなかった。
 しばらくして、ここが旅館だと言うことに気が付いたときは、何て恐ろしいことをしてしまったんだろう・・・本気でそう思っていたぐらいだ。取り返しの着かない過ち。なぜ、自分はそのような暴挙にでたのか判らなかったぐらいである。
 だが、それは全て夢なのだ。
 自分がやったことではない。
 ナルがそう言ってくれる。一晩中、ここで寝ていたと。
 麻衣はすがるようにぎゅっとナルの服を強く握りしめる。
 暖かな温もりを薄い布越しに感じる。
 とくん…とくん…と一定のリズムで鼓動が刻まれ、優しく髪を梳かれる心地よさに、次第に落ち着きを取り戻してくる。
「あら―――お邪魔だったかしら?」
 安堵の溜息をつこうとした瞬間、頭上から聞こえた声に一気に麻衣の顔が赤くなって、慌ててナルから離れようとするが、肩と背中をしっかりとナルに抱かれていて、身動きが取れずナルの腕の中で麻衣はもがもがっと暴れる羽目に陥ったのだった。






 俺の目の前には大切な人が静かな眠りについている。
 白い清潔なシーツに、綺麗な裸体を浮かび上がらせて、朝日が優しく照らしている。
 これほど綺麗な人は居ないだろう。
 俺は白い杯を手にとって、瓶の中身をそこに開ける。とくとくとく…と小さな音を立てて杯に、赤い液体が注がれる。
「クスリだよ…」
 青年は少女の身体を優しく抱き寄せると、杯を少女の口元へと運ぶと、彼女の唇を紅をはいたように赤くさせながら、ゆっくりと口腔内に流れ込む。器が完全にからになると俺は彼女の顔をのぞき込んだ。すると、俺が見守る中ゆっくりと両眼が開き、俺をを見上げてニッコリと微笑んでくれた。
 この瞬間がとても好きだ。
 彼女の視界には自分一人しか映っていないからだ。
「おはよう千尋。今日は気分はどうだい? 今日は午後から気温が低くなると言うから少し散歩してみるか? そうだ、前から欲しがっていたものを昨日見つけたんだ。千尋にプレゼントするよ」
 青年はそう言って千尋にプレゼントするべく、袋を取り出す。
 綺麗な黒髪が、流れるように袋からはみ出ている。
「綺麗な色の鬘だろ?
 千尋は前から欲しがっていたからね。これで良かったかい?」
 俺の問いかけに、千尋はニッコリと笑って頷く。
 千尋が喜んでくれればそれでいい。
 それ以上望むコトなんてないんだ。
 千尋は小さな声で囁く。その声はあまりにも小さくて神経を集中していないと聞き漏らしてしまいそうだが、俺がそんなドジを踏むわけがない。彼女のどんな微かな囁きも漏らさず聞き取る。
「判った――捜すから、待っていてくれるかい?」
 千尋は小さく、コクリと頷くと俺に軽くキスをしてくれた。
 触れるようなキスだけれど、千尋の方からしてくれることは希だから、俺はすごく嬉しかった。
「もう少し寝ていなさい」
 千尋は体が弱い。
 無理は出来ない身体だ。
 出来る限り長生きをして欲しいから、無理だけはしないで欲しい。
 俺の願いが判っているのか、千尋は再びベッドに横たわる。
 ほっそりとした華奢な身体がベッドに沈み込む。俺は自分の視界から隠すように彼女の身体に毛布を掛けて上げる。
「寝付くまで傍にいるよ」
 千尋が伸ばしてきた手を優しく包み込むと、彼女の頬を優しくなでる。よほど気に入ってくれたのか、俺がプレゼントしたカツラを被ったまま千尋は眠りについた。

 さて、次のプレゼントを探しに行かなくては




☆ ☆☆ 作者の戯言 ☆☆☆
これ、恋執以上にかなりスプラッタな話に…森に眠る記憶の代わりの話とは言え森に眠る記憶はけしてこんなスプラッタな話ではなかった。確かに人はばかばかと死んだけれど…共通点は人死にが多いってコトと、麻衣が自分がやっているのでは?と思うところぐらい…全然、全く話は違う。
これには元ネタがあります。と言ってもその元ネタはオリジナルで天華が書いた話で、原形をとどめておりません(笑)原型とどめている物一つあります…人の死に方のみ(ヲイ) 
しかし、どこがゴーストハンター? 私、幽霊物は苦手かも(^^ゞ でも、幽霊物もチャレンジするゾ〜〜〜!!










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