タイムリミットのある恋人達

第三話

 ナルは何度目になるか判らない溜息をついていた。
 彼の視線の先には、麻衣と見知らぬ青年が仲むつまじくお茶を飲んでいる。
 どこからどう見ても恋人達同士に見えるだろう。
 麻衣と見知らぬ青年、美也子と晃司なのだが、ナルには当然麻衣の姿のままに見える。麻衣が言っている限りでは晃司には麻衣として見えるのではなく、美也子に見えるらしい。
 正直に言ってナルにとっては面白くない。
 当然だ。
 晃司にとっては目の前の少女は麻衣ではなく美也子だろうが、周りから見れば麻衣なのである。そして麻衣は自分の恋人だった。
 自分以外の男に向かって幸せそうに微笑むのも、触れるのも、語りかけるのも、ハッキリ言ってかなりいらつく物がある。
 なら、視界に入らないように傍を離れればいいのだろうが、いざ視界から離れてしまうと、気になって気になってしょうがないというものだ。仕事にも思いの外集中できず、余計に苛立たしく思う。また、いつ非常事態が起きるか判らず、ナルと真砂子がこうして共に少し離れたところで様子をうかがっているというのだ。
 日本人形のような真砂子と居ることで、一人でいるより余計視線を集めていることも煩わしくも思うのだが、それは麻衣と一緒にいても同じコトなので、今更気にもしない。
「麻衣は完全に奥に眠っているようですけれど、あの方が麻衣に触れると一瞬意識が浮上するようですわね」
 真砂子が目を細め遠くを見るような視線で麻衣を見ながら呟く。
 真砂子にとってもそれは不思議な光景だった。
 一見麻衣と晃司が仲むつまじく話しているように見えるが、その姿は美也子が表面に出ているため美也子と晃司が語り合っているようにも見える。だが、晃司の手がふいに伸びて彼女の髪に触れたりすると、麻衣が僅かな違和感を覚えるのか、それとも麻衣にとって見知らぬ男性にいきなり触れられることに抵抗を覚えるのか、眠っているはずの意識が浮上しかけ、二人が揺らぐのだ。
「アレを繰り返していたら、麻衣にとっても負担はかなりあって当然ですわ」
 眠るなら一定時間眠り続けていた方がいいに決まっている。無理に意識が戻りかけ一時的に完全に一つの肉体に二つの存在が混同し、無理矢理再び奥に沈むのだ。負担がかかって当然である。
「今日は水曜日ですわ。明日で終わりですから大丈夫と思いますけれど、もしも美也子さんが麻衣から出ていこうとしなかったらどうなさいますの?」
 わざわざ聞かなくても判ることなのだが、真砂子はナルに問いかける。
「仕方ありません。麻衣が泣こうと喚こうと取るべき手段は一つです」
 ナルの無情な言葉に、真砂子は「出来れば穏やかに終わって欲しいですわ」と呟く。
 真砂子から見ても判るほど、ナルはいらだっていた。
 麻衣が自分以外の男と居ることに対して苛立っているのが判る。
 最近気が付いたことだ。
 ナルが常に麻衣を気にかけていることを。
 晃司と別れた後の麻衣は、すぐには歩き出せないほど弱っている。ナルはそんな麻衣に何も言わず抱え上げると、動けるようになるまで待つ。言葉は何もかけていないが、仕草の一つが麻衣を労っているように見えた。
 自分の被験者だからか。
 それとも、部下だからか。
 そんな言葉で片づけられるとは、真砂子自身思っていない。
 二人が付き合っているのかは、真砂子には判らないが……どうやら、失恋決定である。
 イヤ、それもおかしい。
 ナルの気持ちが麻衣に向かっていると分かったというのに、悲しくもなければ悔しくもない。ただ、良かった。自然とそう思うのだ。
 麻衣がナルを思っていることは知っている。
 ナルが麻衣を思っていることは今なら判る。
 二人が、どうかうまくいきますように――素直にそう思える。
 と言うことは、すでに自分がナルを思う気持ちは恋ではなくなっているのだろう。
 今の感情を表現できる言葉は判らないが、穏やかな気持ちでナルを見ることが出来る。今のように仕事がらみとはいえナルと二人で時間を過ごせるのなら、以前なら心が浮き立っていただろう。だが、今は心が浮き立つこともない。
 ただ、大切な友達のために、友人と呼べるよな間柄か判らないが、その人と力を合わせているそれだけだ。
――あたくしも、大人になったと言うことなのかしら?
 麻衣が淹れてくれた紅茶に比べれば、美味しいとは思えない紅茶を口に運びながら、そう思うのだった。




 日が暮れ始めすっかりと、辺りが薄暗くなり始めた公園で立ち話をしていたのだが、ふいに晃司がかがみ込んで美也子の顔を見る。
「美也子、顔色が悪いぞ」
 晃司の言葉に美也子は痛々しい笑みを浮かべる。
 自分の顔色が悪いのではなく、麻衣の顔色が悪いのだ。
「私は大丈夫だよ」
 美也子は明るくそう言うと、くるりと身体の向きを変えて晃司から顔を逸らす。
「ねぇ、晃司さん……明日で、お別れだね」
 美也子の言葉に、晃司は「え?」という顔をする。
「約束の期限、明日だよ。
 明日、晃司さんの誕生日を祝ったら、さようなら――なの」
 晃司は思い出す。最初に美也子が言っていた言葉を。
 たった、一週間の逢瀬。
 短すぎる時間。
「駄目なのか? もっと一緒にいることは出来ないのか?」
 晃司は忘れていた。美也子が死んだものだと言うことを。
 こうして腕を伸ばせば、美也子に触れることが出来る。暖かな肌の温もりを感じることが出来る。死んだ人間と思えるわけがなかった。
「麻衣ちゃんに、これ以上迷惑はかけられないよ」
 美也子は今にも泣きそうな顔で笑いながら空を仰ぐ。上を向いていないと今にも涙がこぼれてきそうだった。
「そうか――――――」
 顔を伏せ掠れた声で晃司は呟く。
「ごめんね。余計悲しみを大きくさせたかも知れなくて。
 だけど、どうしても晃司さんの誕生日を一緒に迎えたくて……」
 晃司は何も言わず美也子の身体を抱きしめる。
 腕の中で微かに美也子の身体が硬直したのが判った。その事に力を緩め腕の中の大切な人を見下ろす。
 だが、美也子を見る限り抵抗しているようには思えない。
 ――ごめんね。麻衣ちゃん…
 美也子は麻衣が微かに抵抗しているのを奥底で感じ、麻衣に向かって囁く。
「明日は、一晩一緒に過ごせるのか?」
 耳元に顔を寄せ晃司が躊躇いがちに囁く。その言葉に美也子は嬉しそうな笑みを浮かべるが、すぐにゆっくりと頭を振る。
 晃司の言っている言葉は、ただ一緒にこうしているだけではないはずだ。
 幾ら自分がそれを望んだとしても、叶えられるわけがない。
「晃司さん……この身体は、私のじゃないの――――――――」
 辛そうな声に、晃司は溜息をつく。
「そうだな…そうだったな……ごめん――」
 美也子もできる物なら、晃司の腕の中にずっといたい。
 だけれど、麻衣は無意識のうちに抵抗をする。
 彼女が望んでいる腕は、晃司の物でないから、全身で拒絶しようとする。
 美也子が晃司から離れようとすると、晃司が美也子の唇にそっと重ね合わせた。その次の瞬間晃司は突き飛ばされる。
「美也子―――?」
 晃司は呆然と自分を突き飛ばした美也子を見る。
 美也子は両眼を大きく開けて、ポロポロと涙をこぼして口を両手で覆っていた。
「あ、ごめんなさ――い……」
 美也子は震える声で謝るが、涙が留まることなく頬を流れ伝う。
 抑えようもない奥で、麻衣が泣いているのが伝わってくる。
 晃司に対する謝罪か、麻衣に対する謝罪か判らない言葉が、漏れる。
 晃司の見ている前で、美也子の姿が歪む。
 黒い髪が栗毛に変わり、黒い瞳が鳶色に変わり、そして、顔の造作から髪の長さまで全部が見知らぬ少女に変わる。
 晃司が初めて見る少女の姿に。
 美也子の意識が急速に眠りについて、麻衣の意識が変わって表面に出てきたのだ。
「きみ―――は――――――――――」
 唖然とした様子で晃司は麻衣を見上げるが、麻衣はただ何も言えず涙を流していた。
 頭はパニックを起こして、何か言える状態ではなかった。
 仕方ない―――理性ではそう思っていても、感情が否定していた。
 ナル以外の人とキスをしてしまったというショックは、思いの外大きいらしい。
 ただ、唇をわななかせながら込み上げてくる物を必死になって、抑えようとするように唇を噛みしめている。
「麻衣」
 耳になじんだ声が聞こえてきたとき、一目見て判るほど麻衣は身体を震わせた。
 ナル達がつかず離れずの距離で、傍にいることを麻衣は知っている。
 だから、すぐに今のを見られた。と思った。
 一番見られたくはなかった、ナルに見られたと……そう思った瞬間に身体はかってに動きだしていた。とっさに身を翻して走り出そうとする麻衣を、ナルは片腕を伸ばして捕まえた。麻衣はそのまま引っ張られるがままにナルの腕の中へと引き寄せられる。
 ナルを見ることが出来なかった。
 下を俯いたまま身体を小刻みに震わせている麻衣を見下ろしていたナルは、軽く息を吐くとトントンと落ち着かせるように背中を叩く。
「落ち着け」
 低い声が囁かれる。
 そこに、麻衣にぶつけられるような怒りは感じない。
 ホッとしたような、妬いて欲しいような複雑な感情が生まれる。
 ナルは尻餅を付いて呆然と見上げている晃司に視線を向ける。
「美也子さんは、麻衣の身体を借りて貴方の前に姿を現している。その事をこれで理解していただけたでしょう。明日の昼、今日と同じ場所で最後になります」
 無情にも取れる冷たい言葉で、ナルが言いきるとナルは麻衣の背中に腕を回して歩くよう促す。麻衣は気が付かなかったが、晃司を見るナルの視線は射殺さんばかりに冷たい眼差しだった。
 晃司はしばらくの間、呆然として身動きがとれず、辺りが完全に夕闇に包まれた頃になって漸く動き出すと、唇に血が滲みそうなほど強く噛みしめながら、冷たい地面に拳をたたきつけていた。
 







「麻衣…いつまで顔を洗っているんだ」
 その夜麻衣は久しぶりにナルのマンションに来ていた。
 マンションに着くなり、麻衣はそのままバスルームに向かって何度も何度も顔を洗っている。さすがのナルも呆れて声をかけるのだが、麻衣は応えずひたすら顔を洗っている。
「麻衣、いい加減に止めろ」
 ぐいっと麻衣の肩を掴んで顔を上げさせると、涙で濡れているのか、水で濡れているのか判らない状態だ。ただ、目が真っ赤になっている。
 ナルの顔を見て麻衣はまた、涙を目の淵に浮かべる。
 こんな麻衣を見たら何も言えなくなるのは、ナルの方だった。
 晃司が麻衣に(彼にとっては美也子にだが)キスをしたとき、ナルの内でどす黒い感情が荒れ狂った。その感情がなんと呼ばれる物か、ナルにもハッキリと判る。
 それは、消化されないまま今もナルの内で荒れ狂っているのだが、ナルは表面上おくびにも出さない。
「麻衣にキスをしたんじゃない。あの男は美也子さんの方にキスをしたんだ。麻衣が気にすることじゃない」
 そういって素直にそう思えるなら、麻衣がこんなに泣くはずはないだろう。
「―――っている―――――――」
 嗚咽混じりの声で麻衣は応える。
 麻衣とて判ってはいるのだ。
 晃司にとって自分は完全に美也子だった。恋人が目の前にいれば触れたいだろうし、キスだってしたくなる。当然それ以上のことだってしたくなるだろう。
 だけど、気持ちが悪かった。
 美也子には悪いが気持ちが悪いのだ。
 ナル以外の男に触れられるのが、キスをされたのが。
「――――――――――――っく」
 止めようと思っても涙が溢れて止まらない。
 ここで泣いても、ナルが困るだけだと判っているのに、止められない。
 呆れられるだろう。
 こうなることを判っていて身体を貸したんだろって言われるかもしれない。
 ナルに何を言われるのかが、怖かった。
 呆れられるのが、怖かった―――――
 ナルは何も言わずただ、麻衣を見下ろしていたが、深々と溜息をつく。それにどんな意味が含まれていたのか、麻衣には判らず不安そうな目で思わずナルを見上げてしまう。まるでそれを待っていたかのようにナルは動いた。
 長身を屈め麻衣に口づける。
 これ以上ないぐらい至近距離にナルの顔があった。
 優しく重ねられた唇。
 麻衣は音が聞こえそうなほどの勢いで瞬きを繰り返す。
 軽く閉ざされた瞼を長い睫が縁取っているのがハッキリと見えた。ナルは麻衣の唇の輪郭をなぞるように舌先でゆっくりと触れていく。
「顔を洗うより良いだろう」
 僅かに唇を話して囁いたナルは、再び麻衣に唇を重ねた。
 今度は深く、呼吸さえも奪うように。
 麻衣の腰に片腕を回し、もう片方の手を後頭部に回して麻衣を支えると、何度も何度も角度を変えて深く重ね合わせる。まだ慣れずぎこちない動きをする麻衣の舌を深く絡め、全てを奪うように激しく麻衣を蹂躙していく。
 ナルが漸く唇を放した時には、麻衣の白い頬は紅潮し鳶色の目は表現しがたい潤みをもち、目尻さえも赤く染めてナルを見上げていた。
 そんな麻衣の様子に満足したのか、微笑を浮かべたナルは軽々と麻衣を抱き上げる。
 ほっそりとして見えるナルだが、けして軟弱なわけではない。
 アメリカ俳優みたいに筋骨粒々というわけではないが、その細い身体には綺麗な筋肉が付いているから、肋骨が見えるというような無様な体形はしていない。滑らかに筋肉が付き、適度に引き締まっている。でなければ、何十キロもある機材を運べるわけがなかった。
 中には麻衣よりも重い機材を運ぶのだ。両腕で抱え上げれば麻衣ぐらい簡単に抱き上げることが出来る。
 いきなりの浮上感に麻衣は慌ててナルの首にしがみつく。
 小さな悲鳴を麻衣は上げるが、ナルはそのまま麻衣を抱えて寝室へと足を運ぶ。
「な、なる?」
 優しくベッドの上に下ろされた麻衣は、真っ赤になってナルを見上げる。ナルは寝室の明かりをベッドサイドのシェードランプだけにすると、麻衣の上に覆い被さるように麻衣を挟んでベッドの上に手を付くと、再び唇を重ねる。
「――んっ」
 いきなりの展開に付いていけず麻衣は目を白黒させていく。何がなんだか判らないうちに、ナルの顔が首筋に下り、チリリ…とした痛みと共に身体の奥からわき上がる痺れのような物が背筋を這う。
 ゆっくりとナルにベッドに押し倒されて、漸く事態が飲み込めるが、更に真っ赤になる麻衣にナルは綺麗な微笑を浮かべる
「あ、あのね―――ナル…明日、学校があるんだけれど…………」
 麻衣は慌てて言うがナルは意にもかけない。
「明日、一日あの男と過ごすから学校は休みを取ったんじゃないのか?」
 そういえばそうだったことを思い出す麻衣。どうやらかなりこの展開にパニックを起こしているようだ。もちろんこの間もナルの手は休むことなく動いている。
「なら、構わないだろう」
 イヤ、余計に不味いと思うのだが……麻衣は焦るがナルは止める気配がない。
 幾ら美也子の身体ではないとはいえ、デートにキスマークをつけていくのはどうかと思うのだが……
「え―――で、でも……ふっ」
 麻衣は息を思わず呑む。
 まだ慣れない甘い痺れとも言えるような物がわき上がって、身体を浸食していこうとする。ナルは白い肌に唇を当て、麻衣の肌に赤い花びらを散らせていく。
「イヤならハッキリ言え」
 肌の上から唇をはなすことなくナルは告げる。
 嫌なわけではない。
 ただ…いきなりの展開に付いていけないのだ。それにまだ、平気な顔をできるほど慣れてはいない。何せ、あの夜から一週間以上経って、漸く…二回目なのだ。
 心臓が五月蠅いほど早鐘を打って、それがよりいっそう麻衣を羞恥に追い込む。
 ナルは顔を上げると、しっとりと濡れている眼差しで麻衣を見上げる。
 普段見ることのないナルに、麻衣はどきり…とする。
「今は、僕のことだけを考えろ」
 ニヤリ、と唇を歪めて言われた言葉に、麻衣は一瞬だけ唖然とするが、小さく頷き返す。
 麻衣が頷き返すのを見たナルは、止めていた行為を再開した。









「落ち着いたか―――――」
 ナルの腕に抱かれて微睡んでいた麻衣は、ナルの言葉に小さく頷き返す。
 あんなにパニックを起こしていたのに、今は凪いだ海のように落ち着いている。
 あれは、自分ではなかったのだ…今ならハッキリとそう思える。
 いきなりのことで美也子と意識が混同してしまって、まるで自分がキスされたように思ってしまったが、あれは自分ではなく美也子の方…今ならそういい聞かせることが出来る。
「明日はどうする?」
 麻衣は少しだけ身体を起こすと、ナルの顔をまっすぐ見て微笑を浮かべて、ハッキリと言いきる。
「会うよ。約束だもん――」
 麻衣の強情さに苦笑が漏れる。
 例え、ナルが止めたとしても麻衣は会うだろう。
 漠然とした危惧がナルの中に沸き上がっていたが、ナルは表面上そのことを一切出さない。
 晃司の方が限界が近いような気がするのだ。
 客観的に視ることの出来るナルだからこそ、気が付いた。
 晃司の目に宿る薄黒い焔に。
 恋人がい傍にいながら、一定以上の距離に近づけないというのは、女が考えているよりもかなりきつい物があると言うことを、今のナルなら判る。
 触れられる距離にいるのに触れることがままならない。
 腕を伸ばせば抱きしめられるのに、キスもできるのに出来ないのだ。
 ナルは身を起こすと、麻衣を自分の下に組み伏す。
 麻衣は不思議そうにナルを見上げていた。
 警戒心の欠片もない目で。
 ナルだから麻衣は無警戒で己をさらす。イヤ、他の男でも変わらないかもしれない。
 そう思ったナルはゆっくりと顔を伏せ、麻衣の首筋に口づけ、強く吸い上げる。
「ナル?痛いんだけれど―――――」
 すでに、白い肌には無数の赤い花びらが散っているが、ナルはより濃い痕を刻み続ける。
「ちょ…ナルッ、痛いってば!」
 腕の中でもがく麻衣を押さえつけ、角度を変えて何度も何度も。
 そして、それは深紅の花びらとなって白い肌に浮かび上がる。
 漸くナルは満足したのか、顔を離した。
「いきなり、何よ」
 痛いって言ったのに…プンッと頬を膨らませる麻衣は、子供っぽくてナルは更に意地悪をしたくなる。
 そして、先ほど丹念に味わった肌の上を再び、ナルが彷徨いだしたのは言うまでもなかった。






 ☆☆☆ 作者の戯言 ☆☆☆
次回で終わります。ナル坊…この時はまだ大人だなぁ〜とちょっと思う天華です。だって、他の話から考えてみると絶対に許さなさそうだもんなぁ〜〜〜魔王様モードはまだまだ入っていないのか…それとも何げに魔王様モード入っているのか……最近の天華には判らなくなっております(笑)




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